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俺は、長曾我部元親。
上場のオモチャ会社の企画課開発設計部で働いてる、普通のサラリーマンだ。
前世の記憶付きって、オマケがあるってぐらいのな。
戦国時代にアニキって呼ばれてた頃の記憶は、
転生したからっていっても、日常生活には何の支障もねえ。
逆にそん時の記憶の奴等が、同じように転生しててよ。
なんで、元々気の合う奴等はダチしてるし。
気に食わなかったのは、それなりの距離の付き合いをしてる。
ただ、一人を除いて。
毛利元就、隣の国の主だった。
瀬戸内の海を挟んで敵対してて、そのうち同盟してよ。
最後は、恋人って関係を結んでいた奴。
コイツだけがいない。
一体ドコにいるんだ…。
それとも転生してないのか…。
周りを見渡しても、消息なんかナイ。
きっと会えるよな、って楽観してたってのに。
ドコにもいねえ。
会いてえ。
元就に会いてえな。
探そうにも、探しようのないジレンマを抱え。
俺は会社勤めをしていた。
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「―――で、今日から企画課促進販売に配属された…」
うっわあああーっ!
「毛利元就くんだよ、仲良くしてあげてくれ」
「…毛利元就だ」
ビックリし過ぎると、動きが止まるってのを初めて知った。
…っじゃなくて!
昔と寸分と違わない姿で、スーツを着て、ネクタイを締めて、人事課の竹中の隣に立って、紹介されたのは…。
俺がずっと探していた男、張本人だった。
「アメリカ支社からの栄転でね、とっても優秀なんだよ、彼は」
「…余計な事を言わなくてよい」
「君が何も言わないから、僕が言ってあげてるんじゃないか」
「…それが余計だと言うのだ」
2人の遣り取りを俺は半ば呆然として、俺は聞いていた。
見つからなかったワケだ。
海の向こう側にいたんじゃ…。
けど、見つけた。今、目の前にいる。
元就。
元就。
元就。
元就がいる。
聞き間違えようのナイ、昔と一緒の凛とした通る声。
あの声を何度も聞いた。何度も呼び合った。
俺は懐かしさと感動で、ひたすら元就を見つめた。
早く、俺を見ろ。
俺を見ろよ、元就。
ゆっくりと元就の視線が周りの人間を一瞥していく。
それが、俺へと巡ってきた瞬間。
何のアクションもなく、ただ通り過ぎていったのに。
期待で膨らんでいた、俺は大きなショックを受けた。
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(春夏秋冬 〜本文より抜粋)
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