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 俺の名前は、長曾我部元親。
 21歳、大学2年…え〜と、一浪してるからな。

 その日は、今考えると予感みたいなモンがあったんだと思う。
 バイトは休みだったし。
 いつも遊ぶダチ達も掴まらなかった。
 なんで、俺にしては早い帰宅だった。
 夜の7時、特に遅い時間帯ではない。
 うっすらと暗くなるくらいの時間だった。

 歩き慣れた道を通り、鍵を取り出そうとしていたトコだった。
 ふと、目の端に映った人影に俺は目を向けた。
 隣の家の玄関の前に、人が一人立っていた。

『元就?』

 俺に呼ばれて、顔を上げたのはやっぱり元就だった。
 隣の家の住人、昔からの幼馴染み。
 最近は俺自身の交流は殆ど無いんだが、確か、高校生だよな…。

『どうしたんだ?』

 制服の儘、途方に暮れた顔をしていた。
 当然、心配になって声を掛け近付いていった。

 それから、話を聞くと鍵を家の中に忘れたそうだ。
 その日、寝坊をしてしまい兄の興元さんに車で送って貰ったのはいいが。
 同時に家を出た為に鍵を掛けたのは興元さんで、寝坊に慌てていた元就は鍵を持っていくのを忘れたらしい。
 興元さんは仕事で遅いし、自分の不手際だから連絡するのが憚れる。
 何処かで待つのも制服だから、校則違反になるから出来ない。
 等々の諸事情で、開かない玄関の扉の前で突っ立っていたという事だった。

 頑固というか、生真面目というか。
 昔と変わんねぇな、元就は。
 と、俺は何か嬉しくなっていた。

 その後、助けの手で、俺ん家で待つ事を提案した。
 その旨を興元さんの携帯のメールで連絡しておけば良いし、と言って。

『いいのか、迷惑を掛けてしまう』
『いいんだって、それより元就をココに置いとく方が心配だろ』

 遠慮はしたが、やっぱり不安だったんだろう。
 俺の些か強引にした勧めに、お邪魔すると乗ってくれた。
 それに笑ってやると、やっとホッと安心した顔をした。
 久しぶりに見る元就の笑顔は、可愛かった。




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(境界線 〜本文より抜粋)



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