【しるし】 寒椿
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冬 冬 冬
寒い季節だからこそ
余計に貴方の温かさを知る事になる
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「姫はもう寝たか、元就」
「うむ、今宵は寝付きがとても良い」
「そりゃあな、あれだけはしゃげばなあ」
「甘やかし過ぎぞ、そなたは」
「んー、まあ、いいじゃないか、新年の祝いなんだしさ」
「毎日では困る」
姫を寝かし付けると言って、新年の宴会から先に部屋に戻っていた元就のトコに。
遅れてやって来た俺は、一応の小声で、元就に声を掛けた。
部屋ん中は、灯りが落とされてるんで薄ぼんやりとしている。
臣下やら野郎共がまだ宴会をしてる部屋からは、遠く離れってから静かだ。
俺は元就に目線で、入っていいかと許可を取った。
「…良いのか?」
「ん? ナニがだ?」
「祝いの席に戻らなくて、だ」
「ナンでだよ?」
「そなたまで抜ける事はなかろう。国主のそなたが」
「イイんだって、あいつ等は俺が居なくたって楽しむんだからさ」
「しかし…」
「ナンで、そんなに俺を追い出したいんだよ?」
「そのような訳ではない…が…」
「じゃ、どんなワケなんだよ?」
俺の本気で言ってるワケじゃねえ、ちっとしたイジワルで言った言葉に。
元就が困った顔をする。
やっと中国から四国に連れて来た元就は、まだ気持ちが落ち着かない時があるらしく。
こんな風に、俺から引こうとする。
判っちゃいるんだが、そんな風にされっと。
俺としても、表には出さねえけど多少の苛立ちがあって。
こうして、言葉で確認を取りたくなる。
元就は俺のモンだ、って。
ドコにもやらねえんだ、って。
それを元就に何度でも教えてやる、ってよ。
「元就、ほら言ってみろよ、どんなワケなんだよ」
「…それは……」
「イイから言ってみろって」
「………姫ならば良いが、我まで…」
「元就まで?」
「………甘やかしては…」
「甘やかしちゃダメってなのか? ナンでだよ、俺はもっと元就を甘やかしてえのに。
いや、甘やかすぞ、元就がダメって言ってもな」
きっぱりと言い切ると、元就の顔が見る見る間に真っ赤になってった。
俺の言葉に、元就が反応してく。
それが、どんなに俺が嬉しいか、元就にはキチッと判らせてやる。
「なあ、元就ぃ、甘やかさせてくれよ、俺に」
「………元親」
両手首を掴んで、姫を起こさねえように注意を払って。
元就の身体を俺の方へと、抱き寄せる。
困ったまんまではいっけど、思いの外、素直に腕ん中に元就は収まってくれた。
「…何故、そなたは」
「俺がどうした?」
「…我などを」
「俺の妻だろ、元就は」
ビクンと跳ねた肩を撫でてやる。
まだまだ時間は掛かりそうだ。
けど、俺は手間を惜しむつもりも、元就を手放すつもりもねえんだからよ。
さっさと、元就が諦めてくれりゃイイんだ。
俺から逃げようなんて気を起こすコトを。
「元就だけだ、俺の妻は。他は要らねえ」
「…我も、そなた以外には」
「当たり前だろ、俺以外なんて俺が許さねえよ」
小さく、元就が頷いた。
今は、ココまででイイか。
あんまイジメ過ぎてもなあ。
…イジメっと、元就可愛くなっから、もっとヤリたくなっちまうんだが。
追い詰め過ぎっと、ナニかしでかしそうなのもヤバイしな。
適当なトコで、止めとかないとな。
「それより、元就さ」
「何ぞ?」
「姫も寝たし、そろそろイイだろ?」
「何がだ?」
あーっ、もーっ、反則だって。
そのきょとんとした顔。
無防備、この上ナイその顔。
俺が弱いって、知んねえだろ。教えるつもりも、ねえけどな。
ナンで、こっからは実力行使な。
俺は軽々と元就を抱いて、立ち上がった。
「も、元親、何を」
「夫婦でするコトなんて、ひとつだろうが」
「すっ、する…って」
「元就風に言うと、夫婦の営み、だな」
「ばっ、馬鹿者っ」
元就の無駄な抵抗も、可愛いよな。
簡単に抑え込めんのに、それでも抵抗する。本心からじゃなく。
恥ずかしくて恥ずかしくて仕方ねえから、抵抗って形を取ってくる。
んで、俺だけに見せる元就の羞恥心が、俺を煽るんだよ。
「元就っ」
ジタバタとしてるトコをギュウッと抱き締める。
息を奪ってやるって勢いで、口吻ける。
「元就…」
声も、視線も、想いも、全部。
髪も、指の先も、躯も、心も。
アンタは、俺のモンなんだよ。元就…。
俺の首へと、やっとこさ腕を回してきた元就を。
俺は褥へと、連れ込んだ。存分に教えてやる為に。
2012.01.02 back
元親×元就♀、しるしの番外編v
元親視点、お正月の話ですvv