誘惑 〜裏
--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--
他でもない
誰でもない
たった一人なのだと
どうやったら教えられるのだろう
あの何も知らない人に
--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--
知謀策略に長けてるつーても、肝心なトコが抜けてちゃどーしようもナイ。
そんな見本みてえだ、毛利元就ってヤツは。
なんで、そこを突きたくなるのは当然のコトだろ。
本人が気付いてナイ弱点はさ。
中国の覇者。
大毛利の当主。
冷血、氷の面、捨て駒扱い…等々。
悪評を一杯背負ってたって、何処吹く風。
その飄々さは、大したモンだって。
だから、目を惹いた。
興味を持った。
近付いたってワケだ。
智将のクセに、俺の下心見抜けねえんだもんな。
可愛いモンだよ。
「何を笑っておる」
「ん〜別に、何だ、俺に見惚れたのか」
「不気味な事を言うな」
「おっ、酷えなあ」
俺がケラケラ笑えば笑う程、眉間に皺寄せて。
物凄くイヤそーな顔をする。
そんでも、美人は美人なんだよなあ。
全く狡いモンだ。
そーやって、目を奪う。逸らすのを許さないとばかりに。
「なあ、俺んトコ、四国に遊びに来いよ」
「断る」
打てば響く拒否が、背筋をゾワッとさせる。
このつれなさが堪らねえ。
力では完全に俺の勝ちだ。
それを判ってんのか判ってねえのかの、危うさがゾクッとする。
警戒させない為にも、舌舐めずりを隠しとかねえと、な。
「いいからいいから、遠慮せずに来いよ」
「誰が遠慮など」
「偶には息抜きもイイもんだぜ」
「諄い」
難攻不落。やっぱ、イイ。
こうなるとナニがナンでもって気になる。
この手応えが、堪らねえんだよ、俺的には。
「いいから来いって、歓迎してやっからよ」
「…一度だけぞ」
とうとう、折れた。渋面でよ。
押しに弱いのは、判ってたからよ。
そこをずっと突いてやれば、イイ。
こんな簡単に、折れてくる。自分じゃ知らずにさ。
「よしゃ、約束したぞ」
「二言はあらぬ」
掴んでいた手を引くと、抵抗がなかった。
もう面倒だって、顔に出してんなよ。
そんなんじゃ、余計に俺に付け込まれるんだって。
俺に有利になるんだぞ、毛利。
ひんやりとした毛利の手をきつく握る。
そうすっと視線の冷ややかさが、強くなる。
あぁ、綺麗な眸だ。
研磨した黒色の真珠みてえだ。
舐めてみてえ。どんな美味い味がすっか。
それが知りてえ。もっと。
俺は毛利のコトを。もっと。
「長曾我部、離せ」
「まあ、イイじゃねえか」
眉を跳ね上げさせる、その仕草も。
真一文字に引き締められる、唇も。
至近距離でも、美人は得だな。
指先に口吻ける。
尖った冷たさが、触れたトコから伝わってくる。
今の毛利自身を現すように。
だけどな。
俺がこれを崩してやる。ぐずぐずに。
壊して、溶かして、縋らせてやる。
この俺に。
ああ、啼かしてやりてえ。
声を上げさせてやりてえ。
押さえ付けて、叩き付けて、観念させて。
取り込んでやりてえ。
ドコにも逃げらんねえように、潰してやりてえ。
手と足を掴んで、縛り付けてやりてえ。
俺んトコに。
考えれば考える程、気分が高まってく。
熱を帯びて、破裂しそうだ。
俺はこんなにも、毛利が欲しくて仕方ねえんだってコトを。
毛利に教え込まねえと、我慢出来ねえ。
なあ、毛利。
早く来い。一刻もだ。
俺を待たすなよ。
どうなっても知らねえぞ。
鬼の俺を待たすと、な。
どうなっちまうかってコトをよ。
その身体に教えてやるよ。
アンタのお得意の『要らぬ』は通用しないってコトを。
俺が直々に、アンタに教えてやっからさ。
ああ。
俺はアンタがこんなにも欲しいんだな。
よく判ったよ。
だから、アンタも判れ。判るようにしてやる。
逃げなくなった手を握り直し、俺は。
もう一度、毛利の指に唇を押し当てた。
2011.12.01 back
元親×元就
指先へのkissは確か『アナタが欲しい』だったかと…
勘違いだったらスミマセン〜
アニキ軽くキッチー入り(笑)