SAKURA


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ひらひら
舞い散る白い花びら
雪の様に
涙の様に
無言で降り積もる

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願いは叶うもん。
そん為に動いて、動けばよ。
最後には叶うもんだって、思ってた。
思い込んでたんだよ、俺は。

毛利…。

アンタが俺の手を取ってくれた時は、本当に嬉しかった。
伸ばした俺の手に、添えられてきたアンタの手。
握り返したら、ちゃんと握り返してくれたよな。
あれも策だったのか。
俺は…どっちでも良かった。策でも、策でなくても。
アンタが俺の手を取ってくれたんだから。
それでイイと思った。
それで構わないと思った。

愚か、だって言うよな、アンタは。
いつも、言ってたもんな。
俺をバカにしてんじゃなくて、哀れんでたんだろうなあ。
今、思うとさ。
すげえよな。
アンタが哀れむってのは、俺を心配してくれてたってコトだろ?
他人の俺を。
アンタがさ。
ホント、今なら判る。
あの時の俺には判らなかったコトが。
今頃、判る。全て、終わって。全て、遅いって。
ああ、バカだよ、俺は。本当にな。

安芸の主。
氷の面。

噂で気に食わねえヤツって決め込んで。
アンタんトコに乗り込んだ。
ガキみてえに、単純にそんなヤツはやっつけてやろうってな。
アンタの姿見て、ヘンに昂揚したのは覚えてる。
見つけたって思ったのも。
ヘンだろ?
鼻で笑うだろ、アンタなら。
でもな、そう思っちまったんだから仕方ねえだろ。
気になっちまったもんは。
アンタに惚れちまったもんは。
惚れたんだよ、俺はアンタに。

どんどん、惹かれてった。
アンタを知れば知る程に。
ひとりぼっちで、寂しいヤツで。
傍に居てやりてえって、俺が居てやるって決めたんだよ。
アンタを一人にしねえって、決めたんだ。

はは…。

アンタにどんなにツレなくされても、アンタに会いに行ってただろ。
アンタに会いたかったからさ。
どんな顔されても、顔を見たかったからさ。
同盟も結んで、国を落ち着かせて、時間を作って。
アンタに会いに行ってた。
一変には無理だが、アンタも変わってくれると思ってた。
俺がアンタを想うように、アンタも俺をってな。

なあ。
そうだろ? そうだよな。

安芸も毛利も切り離せねえアンタが、俺を受け入れてくれてた。
欲張りなヤツだと、俺が言った時。
アンタはナンも言わなかった。
ただ、俺を見ていた。目を逸らさずに。

目は口ほどに物を言う、ってんだっけ?
けど、アンタは違った。
ナンもなかった。ナンも俺に言ってこなかった。
俺はそれが不満でよ。
アンタを散々揺さぶったよな。
酷えコトしちまった。
アンタは口に出来ねえってのにな。
アンタは俺よりずっと国主だったもんな。
ずっと、ずっとだ。

俺はそれが判ってなかった、大バカ者だった。
国、襲撃されて。
策に、嵌って。
怒りで目が眩んで。
取り返しのつかねえコトをやってたのに、気付いていなかった。
自業自得だってコトに。


アンタを忘れてやるって、叩き付けた言葉は。
本当で、嘘だ。
アンタを忘れてえって、思うのと。
忘れらんねえっ、本音だ。
誰にも言えねえ。言うつもりもねえ。
俺が死ぬまで抱えてく、秘密だ。

アンタの、ほら、みた事かって声が。
どっかから、聞こえてくるぜ。
ああ、笑ってろ。俺のコト、笑ってろよ。
俺はアンタを忘れてなんかやらねえからさ。
ぜってえ、忘れねえ。
忘れたくねえんだ。
だからさ、忘れろなんて、言わないでくれよ。

なあ、頼むよ…毛利。


アンタの居ねえ部屋から盗んできたアンタの狩衣を手に。
一人で酒を呑む。
アンタを想いながら。
アンタのコトだけ考えながら。
俺の手にかかった最後の顔を思い出しながら。
もう逢えねえんだってコトに、目を瞑って。
俺はアンタを忘れねえでいる。

狩衣からは温もりも、匂いも消えている。
アンタが居たって証が、消えていくのに。
俺は足掻いてくからよ。
そっちで笑っててくれ。
俺が逝くの待っててくれ。

今度は絶対に間違わねえから。
なっ。
アンタを忘れられねえ、愚かな俺を。
アンタも忘れんなよ。
頼むから。

元就…。





2012.05.14
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