「貴方に花を」 二
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叶わない
叶いそうもない
諦めたい訳でもないけれど
叶わないならば一度だけ
そう願ってしまっている
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やっとココまで来た。
その実感に、俺は胸がざわつく。
毛利を前にして、同盟を組めたコトに。
瀬戸海を挟んでの敵だった。
噂と集めた情報から、ナンだコイツは、な奴だった。
実際、遭遇した時もそうだった。ナンだ、コイツはだった。
最悪の第一印象でしかなかったんだ。
それが、自分の目で確かめてくうちに変わってった。
国に対する、民を扱う、その考えは決して賛同は出来ねえ。
で、向こうも俺を理解しねえ。譲らねえ。
その頑固さは、簡単には崩せねえだろうってのが、判った。
俺には俺、毛利には毛利の、守り方がある。
ナンでもかんでも、同じには出来ねえ。それが判った。
判ったら、毛利を見る目が変わった。
合わねえトコは一杯あるが、俺は一呼吸置くようになった。
毛利って奴を、判りたいって気になったんだ。
ただな…。
そこでだな…。
思わぬコトが起きた。
天地がひっくり返りそうなコトが、よ。
毛利のコトを見てるうちに、いけ好かねえだけだったのに。
ナンか、加わった。意外なモンが。
ほっとけねえ、ってな。
あんだけ関わりたくねえ、勘弁だって思ってたモンが変わってってた。
俺は毛利をほっとけねえ。ほっとくコトが出来ねえ。
そんな風に、よ。
見てれば見てる程に、片意地張るな、とか。
もっと気楽にしろ、周りを頼れとか。
もっと、毛利が楽に息が出来るようにしてやりたくなった。
ガチガチに生きてきて、意志が強いってのは判るんだが。
簡単に、ぐしゃって潰れそうな気もしてよ。
俺はアレコレ口を出し続けた。どんなに迷惑そうな顔をされても。
俺は毛利に口を出した。
「煩い、我に口を出すでない」
「いいや、出させて貰うね」
「鬱陶しい、貴様にそんな権利などあらぬ」
「権利とかじゃねえって、ナンで判らねえかなあ」
「我が理解する必要が何処にあると云うのだ」
「だからさ、そういうコト云ってんじゃねえっての」
頑なで、頑なで。つい、こじ開けたい衝動に駆られちまう。
けど、そんなコトをしたいワケじゃねえ。
俺は根気良く、自画自賛するくれえ、毛利に向かい合い始めてた。
絶対に、正面からどいてやるもんかって、勢いでな。
「黙れ」
「いいや、黙んねえよ」
「貴様は一体、何がしたいと云うのだ」
「んー、具体的にはコレがしたいってのはナイんだけどよ」
「ならば、さっさと我の前から消え失せろ」
「それは聞けねえ相談だ」
言い切った俺の言葉に、毛利の顔が途端に呆れるのを見つつ。
自分でもその意味を考える。
合わない合わない、決して混じり合わねえ筈でも。
関わり合いてえ。傍に居てやりてえ。
国主という立場の前に、な。
それが、俺の結論だ。
けど、それをどう口にすればいいんだ…。
それが、判らねえ。
口にしたらナンもかも、ご破算になる気がしてよ。
その切り口に、躊躇いが出る。
この俺がよ。この俺が、だって。
はあ…。
情けねえ。
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「用は済んだのであろう、早う自国へ帰れ」
「つれねえなあ」
「国主として当然の事であろう」
「それは判ってるさ」
「ならば、さっさとすれば良い」
「だからさ、そんな追い出すような言い方すんなって」
「何故、我が貴様に気を遣わねばならぬ」
「同盟国なんだからよ、こう、もうちっとさ」
「無駄な事よ」
見送り場での会話。
国に帰る俺を毛利は見送りに来た。来てくれた。
ま、政務のひとつってコトなんだろうけどよ。
それでも、少しでも長く顔を見てられんのは、俺としては嬉しいさ。
どんな理由にしても、な。
「しかと、自国を守れ」
「ん? 心配してくれんのか?」
「当然よ」
「へえ、有り難てえな」
「そちらが潰れれば少なからず我が国にも影響が出る」
「へ?」
「だからこそ心して守れ」
「はあ、そういうコトな」
「他に何がある」
キリッキリッと、無表情で淡々と言い放ってくる毛利の顔を。
俺はそれでもマジマジと見た。
暫く会えねえ。仕方ねえのは判ってても、未練が出る。
毛利の傍にいてえってが、俺の一方的なモンでも。
「ま、いいさ。じゃあな、毛利」
「疾くと行け」
細い肩をポンと叩く。
それを踏ん切りにして、俺は船へと乗り込んだ。
野郎共の歓声の中に、身を飛び込ませた。
後ろ髪を目一杯、引っ張られながら。
2012.07.31 back
元親×元就
ナリ様に片思いと思い込んでるアニキです
BGMはミクの【貴方に花を 私に唄を】でどうぞv