「貴方に花を」 八
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夢だと
思えない
思いたくない
それは自分の願望なのか
足掻きなのか
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夢だと思っていねえ。
けど、毛利は夢にしたがってる。
つまり、ナニもなかったコトに。
それが、俺の二の足を踏ませる。
アレは…アン時は、思いを確かめたワケじゃねえ。
とどのつまり、酒の勢いだ。酔ってだ。
酔っ払った挙げ句の過ち…じゃねえ、俺の方は。
けど、毛利の方は?
それが、判らねえ。
だから、聞きたかったんだ。
…聞けなかったけどよ。
ああも、完全遮断されちまったら、聞けねえ。
毛利の氷の面は、本当に記憶にナイのか…。
それとも、しらばっくれているのか、それさえも判断がつかねえ。
感情を出さねえ。これっぽっちも。
おかげで、切っ掛けを失った。
こーゆーコトは、時間が経てば経つ程、聞き辛くなるし。
竦む。
この俺が。
もし、ホントの本当に、毛利が覚えてなかったら。
あれは、酒の所為で、毛利の意志は全く関係なかったら。
そうだったら、聞いてどうする?
聞いたら、そこで終わりになるのが目に見えてる。
残るは…気拙さだけだ。
それ以上は、進めなくなる。
終わり、ってコトだ。
ダメだ。ダメだ。ダメだっ。
それはイヤだっ。
畜生…ナンで、こんな臆病になっちまってるんだ。
俺は…。
船の上から、毛利を見る。
儀礼的な所作。いつもとナンも変わらねえ。
中国の国主。同盟国だから、見送る。
ただ、そんだけの態度。
家臣に促されて、背中を向ける。
表情なんて判んねえ。ナニを考えてんのか、なんて更にだよ。
次、会えんのはいつ、だか。
押し掛けるにも、気合いが必要になるなんてな…。
ホント、この俺がよ。
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ひと月、ふた月、み月…。
二の足を踏むってモンじゃねえ。
行けねえ、中国に。
政務が忙しいを理由にしてる。
このまんまじゃイケねえってのは、判ってる。
ただでさえ、距離があるってのに。
時間まで空けちまったら、どうしようもなくなるってのは。
判り過ぎるくれえ、判ってる。
けど、足が動かねえ。
気力がねえ。奮い立たねえ。
行ってどうする?
玉砕の覚悟なんて出来てねえのに、よ。
行って、聞いて、ダメだった時。
俺は、一体どうしたらいいんだ?
悪い方の想像しか出来ねえってのに。
毛利…。
俺はアンタが欲しい。
アンタに拒まれたくねえんだ。
アンタに俺を受け入れて欲しいんだ。
夢を夢でなく、確かなモンにしてえ。
けどよ。
アンタの本心が全く見えねえのが、苦しい。
あの夜のコトは、ホンモンだったのか。
酔ってはいたけどよ、アンタが俺の腕ん中にいたのは覚えてんだよ。
ウソじゃねえ。
夢じゃねえ。
俺は、それをアンタにも確かめてえんだ。
毛利。
アンタの口から聞けるのは、拒否のみか?
『知らぬ』と淡々と紡がれる言葉だけか?
過ちだと、間違いだと、切り捨てるか?
そうなんだよ。
俺は怖えんだよ。
毛利から、決定的に終わりを告げられるのが。
希望もナンもねえ。
終わり、だ。
終わりにされるコトが、俺はイヤなんだ。
聞かなきゃ、終わりにはならねえ。
そんな後ろ向きな考えしか出来ねえ。
会いてえのに、会いに行けねえ。
聞きてえのに、聞けねえ。
俺はどんだけ、毛利に惚れてるんだ。
今更、気付いて、どうしたらいいんだ。
どうにも、その思考の輪から抜け出せねえ俺は。
いつまでも、毛利に会いに行けなかった。
沢山の後悔をする羽目になっても。
2012.09.02 back
元親×元就
アニキの葛藤グールグル状態、出口が見えません
BGMはミクの【貴方に花を 私に唄を】でどうぞv