Valentine kiss
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甘い 甘い 甘い もの
もっと 甘いもの どこにある?
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呼び出されたというより、呼び付けられたが正しい。
四国から中国、安芸の元就の私室に。
そんで、それはいいんだけどよ…。
この状態、一体いつまでやってりゃいいんだ?
胡座を掻いてる俺の前に、正座してる元就が居て。
それも、俺がここに来てからずっとだ。
結構な時間が経っているんだが、その間元就は無言を通してる。
理由が知りたいのは当然だろ?
呼び出されたのは、いい。
俺だって元就に会いたかったしよ。
けど、このだんまり状態って何だ?
厳しい顔して、口を真一文字に結んで。
掌を拳にして、膝の上で握り込んで。
ん?
……………何だ? 拳が微かに震えてるのが見えた。
もしかして、元就の奴、緊張してんのか??
まさか俺に? …いや、そんな事はねえだろう。
んじゃ、何にだ??
俺は首を捻った。
思い当たる事がねえ。
何回か様子を見つつ、元就にどうしたんだ、と聞いちゃみてみるが。
しっかりと口を閉ざした儘、話そうとはしねえ。
んー、参ったな。
最近、ちと忙しさが重なって、元就んトコに顔を出してなかったからか?
それか?
いや、それ位はいつもの事だしなあ。
それに、それだったら今頃一通り嫌味の応酬をやって気が済んでる筈だ。
大体、絶対にこの日に来いって指定付きでよ。
大慌てで、やって来たらこの様だ。
肝心の元就は、用事も不機嫌の理由も口にしねえ。
俺、知らねえうちにホント何かやっちまったか??
「長曾我部」
「お、おうっ、何だ」
不意に固い声で呼ばれて、どもっちまった。
元就はさっきより切羽詰まった表情になってる。
ホント、どうしたんだよ、コイツ。
「本日、其方を呼んだのは…」
「うん、俺を呼んだのは?」
「これを…」
「コレ?」
元就は横に置いてあった小さな箱を手に取り、その蓋を開けた。
中身がよく見えないんだが…元就は指先でひとつ摘むと、口の中に入れた。
何をしてんだか、全く判らねえ。
何で、声を掛けようとすると。
きっ、と目付きをきつくして元就は俺へといきなり躙り寄って来た。
「元就?」
衿口を掴まれ、元就の方へと顔を引き寄せられる。
あっ、と驚いた途端、元就が唇を合わせてきた。
ひんやりとした感触と共に、何かが押し込まれてくる。
…甘い?
兎に角、理由を聞くのは後でも構わねえ。
俺は元就の腰を抱いて、俺からも唇を合わせた。
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膝の上に、元就の身体を乗せ、俺はぽそぽそと喋る元就の話を聞いていた。
「…独眼竜から聞いたのだ」
アイツかよ。
「南蛮の風習で『ちょこ』という物を本日渡すのだと」
あー、バレンタインな。知ってる知ってる。
「…それで、…その、渡す時は先程の様にするものだとも」
はあっ?
「…教えられたのだ、だから、我は…」
あーのーやーろーっ!
ヘンなトコで素直な元就に、危ねえ事教えやがって。
俺以外にヤッたら、どうするつもりだったんだ!
「長曾我部に贈りたいと」
元就の声が不安を帯びて、俺は慌てて元就の肩を抱いた。
「すっげ、嬉しかった。ありがとな、元就」
「…元親」
鼻と鼻をくっつけて、至近距離で見つめると。
元就が嬉しそうに笑った。
その笑顔に見惚れながら、口吻けようとしたのが。
急に、元就の首ががくんと後ろに倒れた。
「元就っ、どうしたっ」
見ると、元就は寝息を立てて、本気で寝ていた…。
原因は…コレか。
俺はまだ箱の中に残っている『ちょこ』から香る酒の匂いに力が抜けた。
元就の酒の弱さを失念してたけど、ココまでだったとは…。
政宗の野郎も、考えとけよ。
すやすやと眠る赤子みてえな顔に免じて、もう少し待つか。
起きたら大人の時間を実行してやろうと、誓って。
俺は元就を深く腕の中に抱き直した。
2011.02.15 back
元親×元就、2011年のValentine話
ナリ様、大いに頑張る、ですv