『LOVE YOU ONLY』
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ひとりしかいないんだから
アイツは俺のモンだろ
そうだろ? 当然だろ?
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氷の面。
そんなモンにめげてたら、会いに来るんだって出来やしねえ。
纏う雰囲気が、いっくら冷たかろうと気にしてなんかいらんねえ。
近付くな、だの。
疾くと帰れ、だの。
口の悪さ、捻くれさなんぞも堪えてらんねえ。
こんな事らに一々、構ってもいらんねえ。
きちんと相手してやんねえと、拗ねるんだからな。
毛利は。
言葉で拒否して、背中を向けるクセに。
俺が引いたら、泣きそうな顔するだろ?
その一瞬を俺が見逃す筈がねえ。
可愛いしな。
自覚してねえから、余計によ。
だーから。
いいから、こっち来い。
さっさと、来ればいいんだって。
振り払おうとする両腕を掴んで、引き寄せる。
胸ん中に閉じ込めて、ぎゅっと抱き締めてやる。
ほおら、大人しくなった。
顔が赤くなったのを誤魔化すように、下を向くけどよ。
耳が真っ赤になってのに気付いてないトコが、又可愛いぞ。
旋毛が見えて。
髪がさらさらすんのが見えて。
俺にしか晒さない毛利が見れんのが、嬉しくなる。
なんで、こんな可愛いんだろうなあ。
俺が毛利に惚れてて。
毛利が俺に惚れてっからなんだろうが。
絶対に認めようとしねえ。
突っ張って、悪足掻きして、俺との距離を無理矢理作る。
そんな事すっと、後で後悔するクセにな。
でも、まあ。
そんなトコも可愛いと思っちまうんだから。
俺もかなりのモンだ。
奪い取るは海賊の十八番だしな。
毛利も理由付けは必要なんだしな。
俯いた顎に指を掛けて持ち上げる。
力の入っていない抵抗をモノともせず。
薄く、形のイイ、毛利の唇に。
ゆっくりと、触れてやる。
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祝いだ、と言ってやって来た男。
鬼の名を自称する、長曾我部が。
土産を山程、持参して来た。
我の生まれた日の祝いだから、と。
我に取って、意味など無い日を長曾我部は笑って喜ぶ。
その勢いに、戸惑ってしまうのだが。
何事も無く覆い隠す。
我らしく。
「ほら、綺麗な色だろ。アンタに似合う筈だ。着てみろって」
「いらぬ」
「いいから、ほら、羽織ってみろって」
「止めぬか」
「ん、似合う似合う。やっぱ、俺の見立て通りだ」
「馬鹿者」
満足気な顔で、我を蒼の一つ目で覗き込んでくる。
不躾な事を当然とばかりにする。
無神経さも、失礼千万さも、他の追随を許さない気安さを持っている。
何故、我をかまうのか?
疑問も、不可思議も、勝手に飲み込んでゆく。
そして、我の手を取るのだ。長曾我部は。
「我はおなごではない」
「知ってる」
「着飾る気はない」
「俺がしたいんだって」
「勝手ぞ」
「でもな、俺には許してくれるんだろ?」
先々を見通し、計算通りにする。
今まで、それを実行してきたのだ。
何も臆する事など無いのだ。
なのに、何故、長曾我部にだけ通用しないのだ。
陽の当たる縁側で。
長曾我部から贈られた着物を肩に掛け。
長曾我部の膝の上に座らされている。
逃げを打つのも面倒臭くなっている。
雁字搦めに、長曾我部の腕に。
我は捉えられていた。
長曾我部の持つ身体の温かみが、眠気を誘発していた。
うつらうつらと、するのを止められなくなっていた。
『毛利』と呼びながら、髪を撫でる長曾我部の手に。
我はゆっくりと目を閉じた。
2011.03.18 back
元親×元就、2011年のナリ様生誕話
生まれてきてくれて、ありがとうv