ハナマル☆センセイション【1】


--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--

俺は犯罪者になる気はナイっ!
おいっ!
せめて、あと10年育ってからにしろ…
…してくれって頼むから

--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--


婆娑羅学園初等部、五年桜組、毛利元就。
成績優秀、品行方正のクセに、局部的に問題児。
俺の常々の頭痛の種だ。

事の起こりは、この学園に俺が教師として着任した時だったな。
新任だった俺は、一年生のクラスの副担任となった。
正担任の前田慶次に付いて、初日の挨拶を済まし、帰宅して行く子供達を見送り終わった時だった。
一人の生徒が、トコトコと近付いて来たんだ。
ちっこいのに、綺麗に整った顔をしたお人形さんの様な子供。
それが、件の毛利元就だった。

「どうした? 忘れ物か?」
「いや、長曾我部先生に質問がある。宜しいか」

礼儀正しさに、俺は内心で驚いたが。
それを茶化すのは子供にでも失礼だよなと思い、視線を合わせる為にその場にしゃがみ込んだ。

「いいぞ、何を聞きたいんだ?」
「済まない、手間は取らせぬ」

どうやら、緊張しているようなので、それを解いてやろうと笑い掛けてやった。
ついでに、頭も撫でてやると…その俺の手を自分の頭から下ろし、握ってきた。
そして、コクリと喉を鳴らしてから、一大決心の表情で。

「先生には恋人と呼ばれる方は居るか?」
「はあ?」
「正直に答えて欲しい」
「あ、いや、今はいないが…」
「本当か?」
「嘘付いても仕方ないだろ」
「そうか…」

ぱあっと、顔が明るくなって、にっこりと笑う。
その顔に、ああ、子供らしくて可愛いな…なんて、思っていたら。

「では、我と結婚を前提に交際をお願いしたい」
「……はああ?」
「我が先生の恋人になってやろう」
「ちょ、チョイ待て」
「何も待つことは無いではないか。我はちゃんと恋人の有無の確認を取ったぞ。
 不都合な事は何も無いではないか」
「いや、だから、あのな」

一気に捲し立てられて、俺は今度こそ表面に出して焦り捲った。
え? どういう事だ、一体。
今の俺は小学生に交際を申し込まれて、しかも結婚付きの、迫られているっていうのか?
頭ん中、完全パニック…状態になっても可笑しくないだろ!

「我は本気だ」

まあ…確かに。子供のだろうけど。
握られていた手が、グッと更に握られてくる。

「二人で幸せになろう」

目眩がした。
この状況の打開策があるなら、直ぐにでも実行させてくれ…。
目の前の、花の咲くような可愛らしい子供の笑顔を見ながら。
俺は途方に暮れるしかなかった。


――それから、数年が経ち、元就は10歳になった。

が、まだまだ発展途上。
手なんか出せるか。


「元親っ」
「先生と呼びなさい、毛利」

背中に飛びついてきた、まだまだ小さな元就を嗜めながら。
俺は胸の中で、大きな溜息をついた。






2010.04.23
                  back
元親×元就、教師×小学生パラレル
元就の初恋、元親にベタ惚れ話