僕にできること【転】


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確かに何もかも違い過ぎる
けれど諦める理由にはならない
望めば出来る
望んだ通りに出来る
何もしないで諦める事などしない

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昔より、そりゃあ背は高くはなったけど。
相変わらず、ひょろっこい。
それが気に入らねえからって、俺の所為じゃねえだろうが。
時々、無性に腹が立つのか。
俺に、元就は八つ当たりしてくる。
仕方ねえだろ、俺は元からガタイがイイんだ。

聞き流すと、余計に機嫌を悪くすっから。
宥めんのにも、一苦労だ。いい加減慣れたけどな。

子供だった元就は、人間の歳で16になってて。
俺の予想通り、美人に育ってた。顔だけはな。
性格はちっこい頃のに、磨きが掛かってる。

兎に角、気が強いのは、そのまんま。
強情で、意地っ張りで、負けずキライ。
引くってコトを知らねえんだからよお、全く。

けど、俺はそれがほっとけない。
最初に、泣きべそかいた顔を見てる所為なんだろうなあ。
俺は元就を甘やかしちまう。
あんなのが可愛くてさ、最後には折れちまう。
甘やかしてんなあ…俺。

だからかなあ。
最近、ヤバいんだよな。
このまんま、元就を俺んトコに置いておきたくなる。
つまり、家に帰したくない。森から出したくねえ。
掴まえておきてえ、俺の傍に。

狼と人の子ってのは、判ってるさ。
どう見たって、外見が違うんだから。
言われなくたって、判ってる。
けど、それでも。
それよりも、一緒にいてえってのが強いんだよな。
俺は元就を好いてる。
人の子でもナンでも、構わねえ。そんくらいに。

なあ、元就。
俺が帰さないって言ったら、お前どうする?
泣くか、喚くか、怒るか?

俺の毛皮に、いつも通り全身を凭れさせて眠る元就の寝顔に。
俺は、虚しい問い掛けをしていた。


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「元親、どうかしたか? 何かあったのか?」
「あ、ナンもねえけど? どしたんだ、急にそんなコト聞いてきてよ」
「いつもと違う」
「そうかあ?」
「誤魔化すな」

やっぱ、誤魔化されてくんねえか。元就は勘が鋭いしなあ。
付き合いの長さもあるし、こうしてくっついてんだもんなあ。
些細な変化も判らないワケがねえ。
俺だって、元就のコトは誰よりも判る。
そんくらい、俺達はお互いの深いトコに根付いてんだよ。

けどなあ、言っていいもんか…。
悩むんだよ、俺も。
お前が欲しいって。
家族から引き離してえって。
俺んトコに来いって。
そんな簡単に言っていいもんじゃねえだろ?
元就、お前はさ、まだ子供なんだからよ。

「我には話せぬのか」
「んー今はまだな」
「…だったら、いつかは話してくれるのか」
「そうだな…もう少したったらな」
「いつだ」
「それは俺にも判んねえや」
「何だ、それは」
「ゴメンな」
「謝れば良いものではない」
「それでも、ゴメン」

俺の首周りの毛を引っ張らない程度に掴んで。
元就は、真剣な本気な眸で、俺を見てくる。
だから、俺も真っ直ぐに見返してやる。
今、口に出来ない分を込めて。

「狡い奴め」
「まあな」
「約束しろ、必ず我に話すと」
「ん、それは約束するよ」
「本当だな」
「元就に嘘はつかねえよ」

自分じゃ気付いてない、そんな泣きそうな眸で見るなよ。
反則だろ、それってよ。元就。
あんまりにも真っ直ぐに見てくるんで、俺は悪戯心を出して。
元就の鼻先をペロリと舐めてやった。

途端、真っ赤になって怒り出す。
子供扱いするな、とか。馬鹿な事をするな、とか。
俺を罵る羅列だけは、年々増えてくなあ。
そんでも、可愛いんだよ。可愛くて仕方ねえんだよ。
俺は元就が。

「元親、聞いているのか」
「あー、ハイハイ、聞いてる聞いてる」

尻尾を態と、ゆったりと振ってやると。
元就はいつも通りにカチンと来て、さっきより迫力を増して俺に噛み付いてくる。
それに、俺は耳を伏せて聞き流す。

「元親っ」
「ホイホイ」

なあ、元就、早く大きくなってくれよ。
俺がお前を攫ってもイイくらいに、早くさ。
俺の堪忍袋の緒が切れる前にさ。
もう、あんま待つ気はねえんだからさ。





2011.09.14
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狼・元親×神社の子・元就、獣化パロ話
元親視点、37073のキリ番リクエストからですv
狼さん、結構不穏な事を考えて、計画してます