僕にできること【結】
--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--
改めて考えた事はなかった
自然に事と受け止めていた
それを今更覆す気など無い
だから後は実行するのみ
自分の望みを叶える為に
--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--
昔から、変わらぬ。何もかもが。
容姿一つ取っても、変わりが無い。
元親は。
銀の毛並み、隻眼の青。
色もそのままだ。
我だけが、成長してる。変な気分だ。
だからなのか。時々、不安になるのは。
説明の出来ぬ感情が、湧いて出る。
それが、もどかしくて仕方がないのだ。
一人、取り残されそうな気がするのだ。
我が、こんなに近くに居るというのに。
元親は切っ掛けがあれば、するりと何処かへと行ってしまう気がする。
何故、そう感じてしまうのか。
根拠も何も無いというのに。
幼い時に出逢った元親は、人では無い。狼だ。
しかも、人語を話すのだから普通では無いのだろう。
ただ、我に取っては初めからそうであったので。
気にした事は無い。元親はそういった生き物だと思っていた。
逃げ場などにはしていない。
人付き合いは元より苦手なだけだ。
一番、気が落ち着くのだ。元親の傍は。
ただ、それだけなのだ。
父上、母上、兄上。
家族として、血縁として、大事な存在だ。
不満など無い。ある訳が無い。
ある筈が無い…のだ。
―――元親…
こうして、互いの身体を寄せていると。
安堵と睡魔と…まだ形に出来ない感情に包まれる。
この儘が続けば良い。
そう思っている事をお前に告げたら、何か変わるだろうか。
子供の時の様に、お前に縋ったら…何かが……。
--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--
「元就」
最近、元親は何かを飲み込んだ言い方で、我を呼ぶ。
「何ぞ」
我も返事はするが、その先を促す気があまり無い。
何処かで、その内容を知っているからこそ。
聞きたくないのか。
それとも、聞きたいのか。
それさえも、判らない己がいる。
しかし。
だが。
きっと。
望んでいる。同じ事を。
我も元親も、同じ事をお互いへと。
口にしなくても、何故か判ってしまうのだ。
…判るから、口を噤んでいる。
「あのよ、約束は守るからさ」
「…うむ」
「もう少し先になっけどよ、待ってられるよな?」
「…守るのだろう?」
「ああ、守るよ、ぜってえに」
「ならば、待つ」
元親の柔らかな毛並みが、頬を撫でる。
その感触が、我は好んでいて、つい我からも触れてしまう。
いつもいつも。初めに会ったあの頃から。
元親は、我を甘やかす。
それは、子供にする様に。
時折、子供にでは無い様に。
多分、境界線にいるのだろう、我と元親は。
先へ行くつもりではいるが、まだ足を踏み出さずにいる。
生温い湯の中に浸っている様な…。
「イイコだ」
「子供扱いするなと、言っておろうに」
「俺より、ずっと子供だろ」
「無駄に長生きしてるだけでは無いか、貴様は」
「無駄にじゃねえよ、ホント口悪いな、お前は」
「…貴様の所為だ」
「ナンだよ、それ」
元親が笑う。
その振動が、接触している身体から伝わってくる。
それを心地良いと感じる、我がいる。
…離れられぬ。ここから。
「元就、明日はどうすんだ?」
「週末で学校は休みだ」
「じゃ、来るんだな」
「勝手に決めるな」
「来るんだろ、俺んトコに」
笑い続けている元親を拳で叩く。
了承の意を込めて。
そう遠くない未来も含めて。
我は決めてある。
もう既に。
決めてあるのだ、元親。
きつく唇を結ぶ。
そして、我は元親への首根っこを無言で掻き抱いた。
果たされるべきの約束の為に。
2011.09.15 back
狼・元親×神社の子・元就、獣化パロ話
元就視点、37073のキリ番リクエストからですv
まだ口に出せない想いで、チョイシリアス的に完結ですv