(Sweet Drops) - 12
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一歩を踏み出した
そのつもりでいた
けれど気付くと
全く踏み出してはいない
それに気付いて唖然とする
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雨…かあ。
遅くなったランチを食い終わった俺は。
窓ガラスから、降ってる外の雨を眺めていた。
はあ……………っ。
でっかくて、長い溜息がついつい出る。
タバコを吸う気も出ねえくらいの。
仕事中は忙しいし、考えねえが。
その分の反動が、こーゆー時にくる。
雨、冷たそうだよなあ。
窓ガラスに頭をつける。
あ、やっぱ冷てえ。店ん中が暖っけえから余計だ。
外、だいぶ冷えてんだろうなあ。
俺の心ん中も、だいぶ冷えてっけど…な。
はあーーーーーっ。
俺…ナンかしたっけかなあ。
ナンかしちまったか?
気付かねえうちに、気を悪くさせるようなコトを。
言っちまったか、やっちまったか。
…元がガサツだしな。考えられるよな。
思いっきり、地雷を踏んじまったか。
けどよ、それがナンなのかが全く判らねえ!
…参った。撃沈だ。はあ〜っ。
窓ガラスから頭を離し、今度は肘をついて顎を乗せ。
外の雨の景色を見る。見るつーより、眺める。
頭ん中は、ずっとそれで一杯だかんなあ。
毛利さん…俺、ナンか気に障るコトしましたか?
してたら謝りますから、言って下さい…マジで。
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昨日の日曜は2回目のデート。
天気も良かった。気分も良かった。
デートする前までは。
俺は2回目のデートで、約束を取り付けた時から浮かれていた。
1回目ん時の感触が良かったから、余計に。
今回もイケると思ってたんだよ。
少しでも、先にイッて、もっと、イー雰囲気になって。
そうなったらイイ。そうしてえって思ってた。
それが蓋を開けたら…。
先ず、待ち合わせ場所に先に来ててよ。
それはいいんだが、表情が硬かった。
緊張とは違うなってカンジに。
初めは、緊張してんのかなと勝手に思ってたが。
段々、そうじゃねえ。違うってのが判ってきた。
反応が違うんだ、1回目と2回目のデートで。
1回目、緊張はしてたけど、少しずつ打ち解けてくれてるってのが判った。
会話も途切れ途切れだけど、ちゃんと聞いて応えてくれてるのが判った。
ぎこちなさが目立って、それが一生懸命ってのが判って。
どんどん、好意が持てて。
俺は見合いってのも、家同士ってのも、頭から素っ飛んだ。
毛利さんを好きになってた。
俺は俺自身。俺個人で。
たった1回のデートで。
弟の親泰にも指摘された通り、に。
俺は彼女が好きなんだ。
だから、このまんま上手くコトを運んで。
見合いだから結婚を前提にだから、よ。
それを何とか使ってさ、トントン拍子に持ってけたらなあー、と。
そう考え始めてた。自然に。
で、2回目のデート。
それを実現する為に実行に移そうと意気揚々として来たってのに。
彼女がちらりともニコリとしてくんねえ。
話し掛ければ、ちゃんと返事はしてくれる。
態度も丁寧。
上品な仕草も、最初と同じ。
けど、判る。判っちまった。
姿は見える透明の壁が、彼女の周りに張り巡らされたってコトが。
意識してんのか、それとも無意識なのか。
それは判らねえんだけど、すっげえもどかしい。
隣に居るってのに、隣を歩いてるってのに。
俺は焦れてた。もどかしさに。
イライラも仕掛けた。短気に。
…そんなんしたってナンの解決にもなんねえよ、と。
押し止めたけどよ…。
どうしちまったんだ?
俺が何かしたんなら、謝りてえ。
謝って、そっから…どうすればイイ?
凄く中途半端だ。
何をどうすればイイのか判るワケなんかねえ。
一人でグルグルしたって、答が出るワケがねえ。
ココで、一人で考えてたってなあ。
実は次の約束はしてねえ。
予定がまだ判らないと言われて。
それが俺を余計に苛立たせる。
縁を切られるんじゃないかって。
まだまだ細くて、簡単に切れちまう糸を。
強引に動いたら、プツンってな。
慎重に。
俺の性格からしたら、なかなか難しい遣り方だが。
後悔したくねえ。
縁は切らねえ。きちんと結ぶ。
その為には…俺は何をするか。
先ずは、考えねえとな。
そんな風に考えてた俺が飲んだ、今日のランチのコーヒーは。
すっげ苦かった。
2012.03.27 back
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