(Sweet Drops) - 14


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ひとつの不安に気付いてしまうと
それに連鎖したものが
次々と湧きあがってくる
それを打ち消そうとしても
止められなくなってしまう

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決心はしたものの、なかなか行動に移せなかった。
俺らしくもなく。
どうしても二の足を踏んじまう。
竦むってのは、実体験した。初めてだって言っていい程に。
今のでの俺が、どんだけ怖いモンなしだったのかを知った。
それは、相手の事を深くまで考えてなかったからだ。
不誠実にってワケじゃねえ。
当たり障りの無いトコ。浅く広く。
それが、俺の処世術つーか、人との付き合い方だったんだろう。

嫌われる。

そんなん考えたコトがなかった。
気付いて、ビックリしちまった。
相手から嫌われる可能性ってモンがなかった。
そんなコトもあるってコトを知らないでいた。

バカだ。
マジ、バカだ。
こんな簡単なコトに気付いてなかったんだからな。
二の足の原因は、詰まるトコそれだ。
俺は元就さんに、嫌われたくねえ。
好きになって欲しい。
俺が元就さんを好きになってるように、あの人にも。
俺のコトを好きになって欲しい。
けど、人の気持ちってのは簡単なモンじゃねえ。
しかも、好きになっては欲しいってのに。
それを相手の意志からでって、欲があっから難しくなる。

まだ、知り合ったばっかだ、元就さんとは。
見合いっていう手段だったけど、それは切っ掛けのウチの一個だ。
そこは気にしないでいればいい…だけどよ。

『家同士』

それが、気にしねえ気にしねえと、思ってんのに。
どーしても、引っ掛かりをカンジてる部分だ。
はっきり、元就さんに聞いちまうのが一番の解決策だ。
しかし。
だがしかし。
それを、そうだと言われた時のコトを考えると…。
ほらな、二の足を踏むだろ?

一方通行。

もし、今の状態がそれだったらと。
どーすんだ、と。
堂々巡り、空回り、だったらと。
考えて考えて、考え過ぎて、俺は突っ伏してる。
可能性大の最悪に。

こんな風に、俺は落ち込んでいた。
2回目のデートの後から。
次の約束を取り付けられてねえから。

自分でも判るくれえ、鬱陶しかった。


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これ以上ねえってくれえ、落ち込んだ。
ドン底だ。這い上がる気も起きねえ…。
ホントに、目の前が真っ暗になったぜ。

外回りの仕事が終わって、直帰の許可も出てたんで。
帰るか、政宗達に声掛けて軽く呑みに行くかって考えてた時だった。
ふと、元就さんの会社の近くだったのに気が付いた俺は。
あやふやな記憶を辿って、足を向けてみた。

このままじゃ、ラチがあかねえ。
電話だと躊躇しちまって、なかなか掛けられくてよ。
そんなら、直接行って会っちまえば。
どーにかなるんじゃねえかって、俺は思ったワケだ。

会えばナンとかなる。

そんな勢いを抱えて、俺は元就さんに会えるってコトに。
大きな期待を抱いて、足早に向かってみた。

で…そこで、俺が見たモンは。
丁度、会社から出て来た元就さんともう一人。
声を掛けるなんて、頭から素っ飛んだ。
同じ会社の人間だとは、思う。
話しながら、横並びしながら、出て来た。
親しげだった。
男だった。

俺の頭ん中は、真っ白になっちまった。

どうやって、俺は自分ちに帰って来たのか覚えてねえ。
玄関ドアを開けたのは、覚えてる。
親泰の、アニキどうしたんだの声も聞いた。
けど、全部、ナンもかんも素通りしてった。

頭が酷く痛かった。
目を閉じても、頭を抱え込んでも。
どうにもナンなかった。
グッチャグチャ、だった。
後にも先にも進めねえ。動けねえ。動きたくねえ。
考えんのも、認めんのも、俺は全放棄した。
そーしねえと、やってらんねえ。

ズドン、と暗くて深い穴底に。
俺は落っこちたんだ。
動けねえよ、動けるワケがねえだろ。
クソッ!


この夜。
俺は部屋に鍵を掛け、布団を頭まで被って。
苦々しい不貞寝をした。





2012.04.06
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