(Sweet Drops) - 15


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意地を張る
自分を守る為に
意地を張り続ける
頑是無い子供の様に
その先にある後悔に目を閉じて

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次に会える日の都合はどうだろうか、と。
その連絡があったら、どう断ろう、と。
我は、その理由付けばかりを考えていた。
尤もらしく、相手を納得させる理由を。

時間が欲しかった。
もう少し考える時間が。
まだ考えが、きちんと纏まっていない。
この儘ではいけない。
例え、会ったとしても先日の二の舞を演じるであろう。
そんなみっともない事など出来ぬ。
我がする事ではない。

だから、気付くのが遅れた…。

連絡があったら次は断る、そればかりに気を取られ。
肝心の連絡が無い事に、我は気付いてなかった。
抜かった事に。
まさか、我が気付かなかったなど、と愕然としてしまった。
けれど、携帯への着信履歴は無く。
自宅の留守番電話にも、何も無かったのだ。

つまり、向こうからの連絡が途切れている。
その事実に、我は漸く気が付いたのだった。


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鑑みる。己を。

我は一体、何をしてきた?
待っていただけだ。それ以外、何もしておらぬ。
望んでいる事に、我から動いた事は無い。
叶えられるのをただ、ひたすら待っているだけだ。

…叶えられない事は、今まで何一つなかった。

我はそれに甘えていた。
我だから叶えられると、叶えられて当然だからと。
待っていれば良かった。
それが…まさか…。

傲慢。

その事実に、気付いた途端。
足元が崩れた気がした。膝が折れた気がした。
与えられるだけを享受していたのだ、と。

以前の我ならば、この状況を即切り捨ていたであろう。
何様のつもりだ、と。
我を煩わせるものなど、不必要だと遮断していた。
要らぬものに、我が手を煩う事など無いのだと。
しかし。
今は、それが出来ぬ。要らぬなどと言えぬ。
言いたくない。
そう思う、我がいる。
家同士の事と拘り、己の保身だけを考えていた我が。

どうしたらいいのだ?
今更と言われようと、どうすればいいのだ。
見ようとしていなかった愚かさが、突きつけられて。
初めて気付くなど、と。
己の浅慮さに、我は呆然とした。


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「―――で、僕に相談って訳なんだ、元就くんは」
「………そうだ」

どうしても良い知恵など浮かばなかった。
経験が無いのだから、当然だ。
このような時の対処法など、我は知らぬ。
ならば、知っている者に聞いてしまうのが一番手っ取り早い筈だ。
日一日と、連絡が無いのが続いている。
これ以上、先延ばしにしても良い事は無い。
早急に手を打つべきだと、我は判断した。
アドバイスを請おうと。

「…まあた、随分と可愛くなっちゃって」
「何か言ったか」
「いやいや、何も言ってないよ。それより解決法だろ?」
「…そうだ、何度も言わせるな」
「はいはい。全く、それが助けを求める姿じゃないって自覚は…ないんだね」
「煩い」

つい、いつもの口調で言ってしまい、我はしまったと思った。
ここで、竹中の機嫌を損ねる訳にはいかぬというのに。
我は次の巧い言葉が出ず、動きを固めてしまった。
内心で焦っていると、竹中は急に笑い出した。静かに。

「いいよ、ちゃんと考えてあげるよ、解決法を」
「本当か?」
「僕に二言は無いよ。それにね」
「何ぞ」
「元就くんのこんな動揺した姿を拝ませて貰えたから、最高の策を考えてあげないとね。
 さあて、どんな風にしようかな? 何かリクエストはあるかい?
 あ、でもその前に、元就くん、一寸一寸」

手招きをされ、我は少し身を乗り出した。
そこへ。
バチン!
いきなり、額を指で弾かれた。

「竹中っ」
「色んな意味でのお仕置きだよ。
 これでちゃんと目を覚まして、ちゃんと覚悟決めておくんだよ」
「竹中…」
「本気なんだろ?」
「ああ」
「じゃあ、頑張らないとね」

竹中の言葉に、我は痛みの所為での涙目の儘。
ゆっくりと頷いた。





2012.04.13
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