(Sweet Drops) - 18


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自分らしくない事
足元も目先の事も見えなくなっていた
そんな風に目を瞑っていた事に気が付いた
だから気付いたのなら
次は動く事だけだと叱咤する

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『アンタ、しっかりしろよ』

政宗の激励なんだか罵倒なんだか微妙な言葉を思い出す。
けど、的はしっかりと得ている。
俺がやらなくちゃいけねえ。
あんだけ落ち込んだんだ。後は這い上がらねえと。

政宗と呑んで、散々グチを溢した。
主に不安を。
今までこんな不安なんて持ったコトがなかったモンで。
一体、どう扱ったらいいか、マジ持て余してたんだ。
それを政宗はキチンと聞いてくれた。
ダチってのは、ホント有り難いモンだ。

『―――と、こんなモンだ』
『経緯は判った。じゃあ、聞くぞ』
『あっ?』
『このまんま諦めるのか? それとも諦め悪くすんのか?
 どっちだ?』
『それは…諦めたくなんかねえけどよ。
 でもよ、向こうのコト考えたら、諦めた方が…』
『バッカ! 俺が聞いてるのは向こうのコトじゃなくてアンタがどうしたいかだ。
 アンタが諦めんなら、この儘ヤケ酒に付き合ってやるよ。
 けど、そうじゃないならケツ蹴っ飛ばして応援してやる』
『…政宗』
『今直ぐ決めろ。俺だって暇じゃないんだからな、元親』

俺がどうしたいか、だ?
そんなの決まってる。
俺は諦めたくなんかねえ。諦めたくなんかねえんだ。
元就さんのコトを。
好きになってたんだからな。

足が竦んでた。
臆病になっちまってた。
だから、俺は逃げたんだ。尤もらしい言い訳して。
迷惑が掛かる。迷惑を掛けられねえ。
そんな情けねえ理由をさも、尤もらしくして。
俺自身を守ってた。らしくねえ…マジに。
笑っちまう。
俺は、こんなにも、元就さんを好きになってたんだ。
バカだ。ホント、大バカだ。
相手の立場、気持ちを優先すると言ってただけだ。
本当は、ただ縮こまってただけだ。

会いてえ。あの人に。元就さんに。

『腹、決まったみたいだな。顔付きが変わったぞ』
『ああ』
『そんじゃあ、前祝いしとくか』
『サンキュ』
『元親の玉砕記念の』
『縁起でもねえコト言うなっ』


そして。
俺は元就さんへと連絡を入れるつもりで。
先手を取られた。


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待ち合わせの場所に、待ち合わせの15分前に俺は到着した。
今日、会うコトに関して、元就さんから先に言われちまったから。
せめて、こっちは俺が先にしてえって思ってよ。
くそっ、落ち着かねえ。
さっきから、携帯で時間ばっか確認してる。格好悪ぃ。
中途半端な時間で、タバコも吸えやしねえ。
いや、元就さんに会うんだ。タバコは厳禁だ。
タバコの臭い、苦手みてえだもんな。

はあ…。

会えるんだ。今から元就さんにって考えっと。
そわそわする。落ち着くワケがねえ。
ずっと、落ち着いてねえんだからよ。
元就さんと見合いしたあの日から。

好きなんだよ。
好きになってたんだよ。
俺は元就さんのコトが。
こんなにもさ。
それをナンで諦めようかと思ったのか。
どんだけ臆病になってたのか。
凄ぇ思い知らされた。諦めたくなんかなかったってのによ。

勿論、元就さんの言い分だって都合もある。
それは判ってるつもりだ。
けど、ナンもしねえでナンも聞かねえで、諦めるだっけってのはしたくねえ。
それが、俺の決心だ。
ダメならダメで、仕方ねえ。
モンの凄く嫌だが、そん時はきっぱりと諦める。そう覚悟もしてある。

だから、あとは。
俺の気持ちを告白して、元就さんの気持ちを聞くだけだ。
そんだけだ。

はあ…出来っかな。
俺ってこんなうじうじしたトコあったんだなあ。
参った、と首を落とした掛けたトコで。

「済まない、遅くなった」

背後からの声に、俺は飛び上がり掛けたのを。
根性でナンとか押さえ込み、後ろを振り返った。

そこで、俺は。
久しぶりに会えた元就さんの姿に。
しっかりと見惚れてしまった。





2012.05.12
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瀬戸内お見合い騒動記
元親視点、こっちも頑張ってます、ファイト一発!(笑)