(Sweet Drops) - 2
--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--
出来る事と出来ない事
許容か拒絶か
クリアかナッシングか
天秤の傾きを予想してみるが
全く先が見えない
--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--
頭痛が痛え。
いっそ、ぶっ飛ばして拳で片を付けられたら。
どんなに楽か。
2週間前に突き付けられた、見合い話。
問答無用の母親の泣き落としってよ。
この世の中で、いっちゃん狡い手じゃねえか?
確かに。
確かに、だよ。
俺は親に散々心配掛けました。ああ、掛け捲ってたよ。
世間一般の言うトコの、不良ってのしてました。
けど、学生ん時のコトなんてよ、時効にしてくれたってさあ。
…いいじゃねえかよ。なあ?
あー、ハイハイ、判ってるって。
するって言った以上、見合いはするって。
義理でも人情でも、ナンでもしてやるって。
大体、直ぐ下の弟がデキ婚したってのも間が悪いんだよなあ。
ナンで、長男の俺が身固めてねえんだって、言われてもよお。
結婚なんかする気ねえんだから、仕方ねえだろ。
…参った。
ほとほと、参った。
跡継ぎとか体裁とか…ああっ、面倒臭え。
いいじゃねえか。今は真面目にオヤジの会社で修行してんだからよ。
そっちが忙しいんだよ、つーても。
母親には全然通じねえ…。
だからこそ、家庭を持って、社会人としての責任を…云々、と。
延々と説教される。
そして、最後に辿り着くのは孫の顔を自分が生きてるうちに見せてくれ。
なんだよなあー。
…疲れた。
気持ちは判るっちゃ判る。
安心させてくれってコトより、俺のコトを心配してくれてっからってのがさ。
痛え程に判っからさ。
無碍に出来ねえ。
歳くった分、親の心情ってのが推し量れるようにもなったからさ。
だからよ、気持ちが判る分。
親孝行はしてえの、俺だって。
けどなあ…けどなあ…うーん。
見合いか……結婚か……うーん。
向こうから断ってくんねえかなあ。
マジ、ホントに。
--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--
ヤバイ。本気でヤバイ。
寝坊しちまった。
見合いの日に。
ナンか色々ぐちゃぐちゃ考えてたら、寝削がれて。
いつの間にか、寝てたのはいいが。
思いっ切り、寝過ごしてた。
俺は大慌てで、見合いの場所の料亭にバイクですっ飛んでった。
…運良く、白バイに掴まらずに済んだモンだ。
こん時、これで向こうから悪い印象を持たれて。
断ってくれればいいな、とチラリと思った。
けど、寝坊して遅れたのは俺だ。
そこだけは、きちんと謝罪はする。
余計な言い訳なんかしねえ。
時間を守れなかったんだから、それは俺のミスだ。
だから、ビシッと頭を下げた。
謝罪をハッキリと口にした。
そんで、次に頭を上げた時に。
俺は見合い相手と目が合って。
一目惚れしてた。
--*--*--*--*--*--*--*--*--*--*--
等身大の日本人形。
肩までの黒髪、切れ長の眸、楚々とした佇まい。
鶯色の着物が、良く似合ってる。
ちょこんと、座布団の上に座ってる姿は。
瞬きしなきゃ、マジ人形にしか見えねえ。
それが、俺の見合い相手。
毛利元就、だった。
俺は頭のネジが、2、3本どっかすっ飛んだみてえだった。
周りからの仲裁の言葉に、頷くだけで。
何を言われたかは、上の空。
促されて、席に座ると、真っ正面には見合い相手。
目が離せなくなってた。
綺麗だった。
こんな綺麗な人間がいるのか。
動作も仕草も、優雅ってんだろ。
大体、動いてんのが信じられなかった。
本当に、人間なんだろうか。
本当は、精巧な人形なんじゃねえだろうか。
そんな疑問ばっかが湧いてくる。
そして。
そんなボーッと、してたトコに。
「では、後は若い方同士で」
の、お決まりのセリフに。
俺と見合い相手は、料亭の庭に放り出されていた。
2011.10.08 back
瀬戸内お見合い騒動記
自分だけが相手を好きだと思い込んでるお二人さん
元親視点、アニキの優柔不断さ爆発〜(笑)