(Sweet Drops) - 4
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息の仕方
身体の動かし方
そんなのを考え直してしまう程の
緊張感は経験した事が無い
無いから余計に意識する
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俺はどんだけ浮かれてんだ。
仲人さんの、どうぞって言葉に。
2人だけになれるってコトに、頭が一杯になってよ。
全然、見合い相手から目が離せなくなっちまってよ。
注意力散漫で…。
部屋を出る時に、デコぶつけちまうなんてよ。
あーっ、恥ずかしいっつーの。
けどよ、ずっと見てたくてよ。
目、離したくなくてよ。
少し間を取って、隣に立った姿に、俺の目は奪われていた。
立ち居振る舞いも、優雅ってのでさ。
無駄なトコがなくてよ。
動きもふわりとしたカンジ。
重さってモンがナイんじゃねえかって、疑っちまう程だ。
キレイなんだよ。
全部。
こんなキレイな人間がいるんだって、驚きの連続でよ。
いっくら見てても、飽きねえ。
いつまでも見ていてえ。
そんな風に、胸がざわついて仕方ねえ。
これってよ、一目惚れってゆーんだよな。
と、そんなコトばっか考えてたもんで。
部屋から出る時に、盛大にぶつけちまった…ってワケだ。
はあ〜、情けねえ。
けどよ、一瞬だったけどよ。
心配してる目を向けてくれたんだよ。
驚いて呆れた、つーたらそれまでだけどよ。
イイ方に解釈してえじゃん。
心配してくれたんだって、思いたいんだよ。
ひとっつの声掛けが、なくてもさ。
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緊張してる。この俺が緊張してるってのが、一番の驚きだ。
しかも、相手の歩調に合わせてるってコトにも。
着物だから歩き難いだろうな、と思ってよ。
ゆっくりと歩いた。
隣をチラチラ見ると。
…背、ちっちぇな。こうして並んでみっと、よく判る。
…顔も、ちっちぇ。耳も目も鼻も、口も全部小さく出来てる。
それがキレイに配置されてるんだよなあ。
見飽きねえ…わ。
抱き締めたら、すっぽり包み込めそうだ。
でも、力入れられねえなあ。潰しちまいそうだ。
けど、抱き締めたら、離したくなくなりそうだ。
色々、ヤッちまいたくなりそうだ。
…イヤ、ヤッちまいそうだ、俺。
どーしたらいいんだ?
どーすればいい?
俺は………。
思考がグルグル回り出す。
頭ん中が飽和しかけたトコで、俺は空を仰いだ。
あー、イイ天気だ。空の青が眩しい。
そんな風に上を見上げて、下を見ると。
ちょこんとした姿に又、目を奪われて。
俺の緊張感は更に増してった。
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「…では、返事は後日改めて」
そう仲人さんに言われ、見合い場所から帰って来た俺は。
上着を脱ぎ、ネクタイを弛めただけで、ベッドにダイブした。
はあ〜っ、精神の疲れが一気に脱力してく。
長いような、短いような一日だったよなあ…。
黙っていらんない性格で良かったと、つくづく思った。
何だかんだと、沈黙に耐えられない俺は色々と話し掛けてみて。
んで、色々な情報を本人から聞き出すコトに成功した。
そりゃ、身上書っての見りゃある程度は判るさ。
けど、俺が知りてえのは、そういったモンじゃなくてよ。
どんなコトをどんな風に思ってんだろうか、とか。
どんなコトに興味を持ったり、感心したりしてんだろうか、とか。
そんな内面的なコトなんだよなあ。
あんま感情を外に出すタイプじゃねえ、みたいだ。
無口っちゃ、そーなんだろうけど。
聞けば、ちゃんと返事をしてくれたしよ、律儀っポイ。
見掛けのイメージは、古風で楚々ってカンジだったけどよ。
話すと、頑固な面、生真面目なトコもあってよ。
俺は気持ちが、ドンドン傾いてくのを自覚してる。
俺から断るなんて、考えてねえ。
けどよ…けどなあ…。
向こうは、どう思ってっか…。
家柄なんて今まで気にしたコトねえけど、見合い話がきた時点で。
それなりの釣り合いはあるワケだ。
けどな…けどな…。
俺みてえなガサツな男で、アッチがOK出してくれるかどうか、だ。
初っ端に、遅刻なんて印象悪いコトしちまったしなあ。
あ〜、俺の都合のイイ方に転がってってくんねえもんか、と。
そんなコトをつらつら考えながら、俺はそのまんま寝ちまっていた。
見合い相手の毛利元就の顔を思い浮かべながら。
2011.10.27 back
瀬戸内お見合い騒動記
自分だけが相手を好きだと思い込んでるお二人さん
元親視点、珍しくアニキも心揺れ揺れで大変です(笑)