(Sweet Drops) - 6


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考える
何度も何度も繰り返し考えるみる
成功と失敗の両方をシミュレーションして
上手くいけば良いとの願いと
駄目だった時の防御を兼ねて

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あーっ、落ち着かねえ。
落ち着かねえったら、落ち着かねえっ。
即断即決が、俺の売りだってのによ。
見合いの返事が、どーしても、なかなか出来なかった。

俺はOKなんだ。
見合いでもナンでも、出会っちまったんだ。
俺としては、この縁を逃したくなんかねえんだよ。
けどよ。
こればっかは、一方的ってのは無理だろ。
相手の意志があってのコトだろ。
いっくら俺がっても、なあ……はぁ。

「もーとちか、どうしたんだい?」
「………ナンだ、慶次か」
「何、その言い方、酷くない?」
「………ナンの用だよ」
「別に用はないんだけどさ、そんな顔してたら心配しないわけにはいかないじゃない?」
「………ほっとけよ」
「ほっとけないよ、俺のお節介知ってるでしょ?」
「………知ってる」
「じゃあ、洗いざらい喋っちゃいなよ、楽になるよ?」
「………俺は犯罪者か」

喫煙室で休憩していたトコをコイツ、慶次に見つかった俺は。
煙草の煙と一緒に、でっかい溜息を吐いた。
慶次は一言でいっちまえば、イイ奴。お節介付きの。
ナンでも首を突っ込みたがる。
特に、恋愛関係には鼻が利き過ぎるつーか。

「んーと、もしかして原因はこの間の日曜のお見合いかな?」
「はっ、どーして判った」
「カマ掛けてみたんだけど、やっぱ、当たり?」
「お前なあ」

わざわざ隣に来て、煙草を吸い出した慶次がニヤニヤと笑っているのが。
癪に障る。
けど、憎めねえんだよなあ、コイツはよ。

「で、相談したい事ってある?」
「ねえよ」
「顔にはあるって書いてあるけど?」
「ホント、お前ってお節介だな」
「うん、性分だからさ、仕方ないじゃん」

ホントだな。
そうだよな、性分だったら仕方ない、よな。
いっくら打ち消そうとしようが、押さえようが。
俺は見合い相手が、気になって仕方ねえんだもんな。
どーすっかって考えながら、ちっとも諦めてねえ。
だったら。
俺は俺のやりたいコトをやるしかねえってコト、か。
ヨシッ。

「あれ? いいのかな?」
「ああ、まだイイわ」
「そっか。じゃあ、頑張ってきてね、元親」
「そうするさ。慶次、サンキュ」

吸い殻を灰皿に押し込め、俺は慶次の肩をトンと叩いた。


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決心はした。次は連絡するだけだ。仲人んトコに。
さっさとしちまえばイイのは判ってる。
けど、その勢いが…くそっ。
あー、情けねえ。慶次に啖呵切ったってのによ。

仲人から連絡がまだねえのは、向こうからの返事がねえってコトで。
どっちかなのかは、不明。
そんだったら、俺が先に返事をしちまえばイイ。
それに対して、どっちの返事になるかは神のみぞ知るでイイさ。

俺は自分で直接、仲人んトコに連絡を入れた。


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トントン拍子にコトが進んでる。
ホントにホントかってくれえに。

先にと、俺は返事をした。
OKだと。話を進めて構わないと。
それに対しての返事が、NOでも構わねえと覚悟してよ。
家同士の話だったんだ。
断ってきても当然でよ。
そんな仕方のねえ話だった筈、だった。

大体、俺は乗り気じゃなかったモンな。
相手に会うまではよ。
それが、今じゃ気になって気になって。
あん時の短い時間が何度も繰り返し、思い出せる。

ツンとしたイメージ。
ちょこんとした小っこくて、細身の身体。
背筋を伸ばした凛とした、立ち姿。
着物がすっげえ良く似合ってた。

ナンだろうな、俺はあん時、完全に目を奪われてた。
日本人形みてえな顔が、目が、俺を見ていてくれたコトに。
俺は手を伸ばしたくなった。
俺が伸ばせるだけ、伸ばそうと思ったワケだ。

なんで、自分の耳を疑ったが。
向こうからもOKの返事があったコトに。
俺は張り切るコトを決めた。

家同士でもナンでもイイ。
この縁は、俺からは絶対に切らねえ。
切るモンか、と俺は強く決心した。





2011.11.03
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瀬戸内お見合い騒動記
自分だけが相手を好きだと思い込んでるお二人さん
元親視点、アニキもそわそわジタバタしてます(笑)