透通る波 V
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いつも見つめていたい
目を逸らしたくない
なのに目が合うと微かに逸らしてしまう
気持ちと一緒に
そんな事をしたくはないのに
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「Hey、元親、こっちだ、こっち!」
「おう、政宗」
待ち合わせの店に行くと、先に着いていた政宗が。
椅子に凭り掛かりながら、大きく手を振っていた。
相変わらずのアイツに、俺も軽く手を挙げて近付いた。
「オッシ、元気そうだな」
「アンタもな」
パンッと、掌を叩き合わせてお互いを見る。
元気そうで、安心した。
「久しぶりだな、元気だったか」
「見ての通りだ。アンタも元気そうだな」
「ああ、俺は元気だ」
「見りゃ判る。それより…元就さんは、どうだ? 元気か?」
「ああ、アイツも元気だ。大丈夫だ」
「そうか…。なら、良いさ」
「ありがとな」
「俺が心配してんのは、元就さんだ。アンタじゃねえよ」
テーブルに肘を付き、ニッと笑ってくる。
政宗らしい言い方で。
久しぶりにそれを聞くと、ホッとする。
…やっぱ、どっかで気が張り詰めてんだろうな、俺は。
「んじゃ、先ずは仕事の話をするか」
「そうだな、さっさと済ますか」
忘れずに持参して来たデータを政宗に渡し。
俺らは、先に仕事の話を始めた。
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政宗は古い友人だ。
初めて会った時から、妙に気が合った。
付き合いは長く、最高の悪友だ。
口が悪く、お節介の。
俺と元就のコトを知っている数少ない人間の一人だ。
そして。
一番、強く、大反対した奴だ。
元就のクローンを創るコトに。
殴り合いの喧嘩もした。
目を覚ませと、頭を冷やせと、物凄い剣幕で怒鳴られた。
そんなコトをしてナンになる。
元就さんに悪いと思わないのか。
辛いのはアンタだけじゃねえ。
思い付く限りの制止の言葉を口にしてくれた。
ホント、イイ奴だよ、政宗は。
俺を心配して、元就のコトを尊重してくれて。
心の底から、俺を説得してくれた。
泣いてもくれた。止めてくれってな。
けど、結局は俺は押し通した。
耳を貸さなかった。傾けらんなかった。
俺には、元就のコトしか考えられなかったんだ。
元就の居ないトコで、生きるなんて出来なかったんだ。
あん時の俺を止められるモンは、ナンもなかった。
マジ、捨て身だったからな。
俺の全部は、元就のモンだったからな。
それから、折れてくれた政宗は、俺の一番の協力者になってくれた。
理解はしねえ、と言いながら一番親身になってくれてる。
今も、それは続いてる。
こうして仕事を介して、不定期にだが顔を合わせてる。
近況報告も兼ねて。
政宗には、ホント感謝してる。
コイツのおかげで、今の生活をスムーズにも出来ている。
口は堅く、慎重に、助けてくれてる。
ダチなんだから、当然だろって照れ隠しで怒ったフリしてよ。
心中は未だ、複雑だろうに。
俺を許してくれてる。ありがとな。
「…で、進展は?」
「は? ナンのだ?」
「アホ、アンタと…元就さんの事に決まってんだろ
俺には聞く権利があって、アンタには報告する義務があんだぞ」
「ナンだよ、それは。いつの間に決まったんだよ」
「元親が大馬鹿になった時に、決まってんだろ」
「ああ、そうかよ」
「ほら、洗い浚い喋っちまえ。んで、少し楽になってけ」
言うだけ言って、政宗は珈琲を飲む為に俯いた。
俺から視線を外した。
こうやって、政宗は俺が少しでも楽になれるようにと配慮してくれる。
コイツだって、しんどいだろうに。
俺は当事者だからいいんだ。全て納得済みだからよ。
けど、政宗は言葉は悪いが第三者だ。
俺のワガママに引き摺られてるだけだ。
俺のコトなんて、突き放せばいいのによ。
俺もバカだが、コイツもバカだよな。
類友か? 全く、困ったモンだよな。
「元就な、相変わらず綺麗だぞ」
「アホっ!」
ゴンッと拳骨で脳天を容赦なく、ぶっ叩かれた。
目の前に星が飛んで、俺はテーブルに突っ伏した。
2012.04.07 back
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