High High High -2
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些細な事でも
ちゃんと気付く
見ているから
気にしているから
好きな相手だから
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元就さんの様子がおかしい。
初めは疲れが溜まってるんだろうな、と思ってた。
流石の俺だって疲れたんだから、元就さんじゃもっと疲れるよなってさ。
全力疾走の一ヶ月。
結婚するって決めてから、あっという間に駆け抜けた。
何をそんなに急ぐんだってのもあったけどよ。
急ぐ理由なんて、1つだ。
元就さんの気が変わらないうちに、だ。
ナンで、俺は勢いで押しまくった。
一度は、早合点で諦めかけた人なんだ。
どうしても、家同士の見合いってのが頭にあって。
それでもいいって、思いもしたんだけどさ。
やっぱ誤魔化せなくてよ。
そりゃあ、そうだよな。自分のコトなんだもんな。
家じゃねえ、俺自身を見て欲しいってなってよ。
けど、それは単なる俺側のエゴじゃねえかって。
しかも、タイミング良く誤解しちまう出来事もあってよ。
…ホントに、誤解だったんだけどよ。
俺は元就さんを諦めかけた。
幸せになって欲しいなんて、最もらしい理由ってゆーこじつけしてな。
無駄だったけどよ。
俺が二の足を踏む。
臆病になる。口を噤む。聞きたいコトが聞けねえ。
そんな臆病風に、マジ吹かれたなんてな。
信じよーが信じまいが、本当のコトだ。
この俺が…。
今思えば、元就さんに嫌われたくなかったんだよな。
余計なコトしたら、嫌われるんじゃねえかって。
そんな風に思ってた。思い込んでたんだよなあ。
「…元親」
「あ、ナンだ? どした?」
テーブルで向かい合わせに、夕飯を食ってる最中。
元就さんに呼ばれて、ほんの少し前を振り返っていた俺はハッと気が付いた。
「我より、元親がどうしたのだと聞いておる」
「へ?」
「いくら呼んでも返事をせぬし」
「あ、ゴメン」
「それに、ピラフを溢しておる」
「え?」
指摘されて、見ると確かにスプーンからピラフを溢し捲ってる。
うわっ! ガキか、俺は。格好悪ぃ。
「子供のようぞ」
くすくすと、元就さんが笑い出した。
うわっうわっ! ナンだよ、反則だぞ。
そんな自然に、俺の前で笑ってくれるなんてよ。
これって、俺に気を許してくれてるコトだろ。
そっかあ。そうだよな。
俺達、結婚したんだよなあ。
俺も元就さんに合わせて、込み上げてきた幸福感と一緒に笑い出した。
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で、一番初めに戻る、ワケだ。
元就さんが疲れてるのは、判った。
無理をしちまうのは、性分だろうし、無理に止めるとストレスになるだろうし。
なんで、どこで、どうやって、どのタイミングで。
元就さんを休ませてやろうか。
考えてみた。
ここは、やっぱ、夫婦の絆を深めるのが良いよな。
ゆっくり出来てねえもんな。
少しは、落ち着いてきたとはいえさ。
何しろ、まだ、新婚旅行に行ってねえ…。
どうしても、スケジュールが合わなくてよ。
結婚式を最優先にした所為で。
元就さんも俺も仕事は忙しいんだもんな…。
けど、後回しにしたからって、素っ飛ばす気はねえ。
ちゃんと、行くぞ。行くんだ。行きてえもんな。
俺が。
元就さんも、その筈だ。俺の自惚れも入れてだけどな。
そう思ってる。
初夜はちゃんと済んでるが。
新婚旅行の思い出ってのも、大事だろ。
一生に一度のコトなんだからよ。
だから、ナンとかしてえよなあ。
ふと、夜中に目が覚めちまった。
腕ん中には、夢じゃなく元就さんがちゃんと居る。
静かな寝息を立てて、俺の腕ん中で寝てる。
ジーン、ときた。
一杯、幸せにしてえ、この人を。
一緒に、幸せになりてえ、この人と。
そんなコトが、ポンと湧いてくる。
今まで、こんな強く思う相手はいなかった。
元就さんだから、思うんだ。
俺は、そおっと、元就さんを起こさないように気を付けて。
もっと、腕ん中に元就さんを引き寄せて。
前髪がはらりとしたおでこに、キスをした。
2012.06.26 back
とある方より、その後の話と云って頂きポンと思い付いた話です
お見合い話のその後、つまり新婚さんな瀬戸内になります
元親視点、新婚生活を満喫しつつ、奥さんの動向に気を付けてます