「私に唄を」 十三
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こっちの気持ち
あっちの気持ち
天秤に掛けてみて
ゆらゆらと揺れるのを眺めてみる
そっから出てくる答を待ちながら
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「で、これからどうすんの?」
「どうすんのか云ってくれたら、手伝うよ?」
「Ha、どうせ、ロクでも無い事を企んでるんだろ、さっさと吐け」
三種三様。
口々に有り難くも煩く詰め寄ってくる、猿飛、慶次、政宗に。
俺は口を噤んだまんまだった。
企むもナニも、具体的なコトは全く考えてなかった。
ショックがデカ過ぎてよ。
あの日。
元就から付き合えない。
キライではない。けど、スキになれない。
つまり、関心がねえって云われた時によ。
俺がどんだけ自分勝手だったのかを知ったんだよ。
元就のコトは、スキだ。
その気持ちに変わりは、ねえ。
前世なんか関係なく、今の世でもスキだ。
だから、今度は、ってさ。今度はよ、ってさ。
本気で思って、気負ってたのが全崩れした…ってワケだ。
ホント、笑っちまうよ。
俺はどんだけ…。はあ。
「だ、大丈夫? 元親」
「あらら、随分とキテたんだねえ」
「おい、もしかして、本気で落ち込んでたのか?」
あーっ、煩え。
けど、有り難てえ。
コイツらがゴチャゴチャ云ってくれっから、いくらか救われてる。
「元親〜、ホントに大丈夫?」
「無理しなくていいからね」
「ほら、さっさと立ち直れって、お前らしくもねえ」
「………ああ、そうだな」
顔を上げる。身体を起こす。
そんで、気持ちを立て直す。
仕方ねえ。諦めるなんて出来ねえんだ。
これはもお、元就の方に諦めて貰うしかねえよな。
悪いとは思うけどよ。
今更、他のコをスキになるなんて、俺には出来ねえ。
ずっと、元就だけがスキだったんだ。
ホント、昔っから。大昔っから、な。
なんで、じゃあ。
「あれ? 大丈夫そう?」
「あんま無茶はしないでくれると助かるんだけどねえ」
「止めるなんて野暮はしねえぜ」
「ああ、チョッとばかし手伝ってくれ」
力強く、楽し気に頷いてくれた慶次と猿飛と政宗に。
俺は、ニッと笑い返した。
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当面の最大の難関は、サヤカだ。
アイツが完全に、元就へのアタックの壁になっちまってる。
隙が無いのと容赦無いのは、昔と同じだなあ。
なんで、記憶はある…ような気がする。
見てるとそんな気がすんだよ。
隠してねえつーか、隠す気がねえんだろうな。
聞いたら、答えてくれそうだ。
ただ、今のサヤカは元就のボディガードしてっからなあ。
簡単には、いかねえな。うん。
さて、と。
そんなサヤカを先ずは、元就から引き離す。
兎に角、もう一度元就と話すコト。
それが第一目標だ。
キチンと話してえ。元就と。
あん時さ、元就から一方的に云われのってよ。
俺が今まで、してきたコトなんだよな。
取り敢えず、云うだけ云っちまう。
云えば、云ったコッチは、すっきりはする。実際、してきたしな。
けどよ、それって放り投げてただけなんだよな。
向こうの意志を聞いてなかった。
聞こうとしてなかった。俺はいっつも、だ。
それに気が付いた。
愕然としたぞ。マジで。
それで自己満足して、返事も聞かずに満足してよ。
コッチの気持ちは伝えたから、判ってくれたよなって。
そんな暴挙をしてたのかと思うと、メチャクチャ落ち込んだ。
振られたってコトより、ショックだったんだ。
コレが一番。
だから、元就の傍に行けなかった。
どうしてもダメなのかって、聞きに行けなかった。
自分のバカさ加減に気付いたからよ。
けど、悪いがもお限界だ。
元就の顔が見てえ。
傍に行きてえ。
隣を歩いて、声を聞いて、話してえ。
今度は、ちゃんと元就と向き合って。
昔に出来なかった分も一緒に。
「元親ー、先に行くよー」
「任せられたからね〜」
「後はお前次第だからな、しっかりやれよ」
「サンキュ、頼むわ」
掌をパンと小気味よく叩かせて、俺達は作戦実行に散らばる。
こっから、正念場だ。
絶対、ナニとかしてやる。
俺は元就の顔を思い浮かべ、足を踏み出した。
2012.11.03 back
戦国設定の「貴方に花を」からの続きの話です
アニキ、凹み中から復活〜
元親視点、反省点を踏まえて動き出します