GAME 【nari】


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嘘だ
誰が信じるものか

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5月、初夏の過ごしやすい季節の筈なのだが。
今朝からの雨が止まず肌寒い。
なので、薄手のレインコートを羽織っていた。

通勤電車内は混んでおり、身動き出来ず辟易する。
しかし、こればかりは仕方ない、と。
我は目を閉じ、この時間が早く過ぎるのを。
駅に到着するのを待った。

そこへ。
ガクン――と、車体が大きく揺れた。

「スミマセン」
「いや、大丈夫だ」

人波が押され、ドア横の隅に、目の前にいた男に身体を押し付けられてしまった。
即座に、謝罪があったが。
背が高く、見上げないと顔が判らない。
しかし、別に良いかと、その儘でいると。
左肩がズキリと痛んだ。
右手が何とか上がったので、痛むところをさすってみた。

「痛みますか」

不意に、男の頭が下がってきて。
我の耳元へ寄せられた唇から、言葉を発した。
低い声で。

「申し訳ありません」

その声の響きに、思わず驚き。
大丈夫だと、もう一度言おうと口を開き掛けた時。
信じられない事が起きた。

男の腕がコートの中に入り込み、腰へと回され。
男の胸へと抱き込まれ、身体を密着された。

な、何が起きているのだ。

「詫びをしないとな」

くつくつと、笑っているのが、聞こえてきた。
その笑い方に、悪寒が走る。
先程まで見せていた殊勝さが、消えている。

ギョッとした瞬間に腹がへこませてしまった。
その一瞬の混乱の隙を付かれ、男の手がズボンの中に侵入してきた。
あまりの素早い動きに、抵抗をする前に掌に陰茎が握り込まれた。

「…あっ」
「声、我慢しろよ? 周りに聞かれたくないだろ」

勝手な言い分に、反論をしたいが。
動き回る手の所為で、口を開いたらとんでもない声が出そうで。
奥歯を噛み締めるしかなかった。

「そうそう、その調子」

からかう声に、怒りが湧き上がるが。
男の手が、それを霧散させる様に動く。
強弱を付けて。

今、己にされている事に思考を奪われていく。
許し難いというのに、握られている箇所から。
確かに、快感を得始めている身体をどうしようもなくなってきている。

「気持ちイイだろ? アンタのココ、おっきくなってきたもんな」

冗談ではないっ。
誰が好き好んで、この状況に耐えているものかっ。
発火した怒りに、至近距離にある男の顔を睨んだ。

すると。
片方が眼帯で隠され、残りの青の色の片眼が我を見て笑った。

「イイなあ、アンタ。気に入った」

そう、男は言って。
握られていた陰茎が解放された。
我は詰めていた息を大きく吐いて、力を抜いた。
だが、それが油断だった。

「そのまま…な」

スルリと、後ろに回った男の両手が、ズボンから下着の中へと一気に入り。
とんでもない事に、何かを身体の中に押し込まれてしまった。

小さな物が滑る様に、男の指先で入れられてくる。
その異物感に、身体は震え、我は男の身体にしがみついた。
脂汗が滲む。

「微弱だから、我慢出来るよな?」

男の言葉の意味が判らない。
判らなかったが、身体の中から振動が起こり。
我は身体を固くして、その衝撃に耐えた。
確かに、我慢は出来る。出来るが、これは…。

「次の駅で降りるからな」

考える事を放棄した頭が、コクコクと頷く。
身体の芯からの熱に、支配されていく。
そんな己を宥める為に、ゆっくりと、唇を噛んだ。


駅に着いたアナウンスが入り、人混みが流れ出す。
その流れの中。

「具合、大丈夫ですか」

我にではなく、周りに聞こえるように話し掛けてくる男の声を聞きながら。
横を見上げると、今度は銀色の髪が目に付いた。

我は一体、どうなるのか…。
この男に、どうされてしまうのか。
何も考え付かない儘、我は支えてくる男の腕の身体を預けてしまった。





2010.05.28
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元親×元就、リーマン設定、痴漢物
アニキ変態入ってるので、一応R18話