ナンデナンデナンデ 〜右側
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気にしない
気にしない
でもそれって気にしてるの裏返し?
ならば気にしてしまってもいいよね
気になるんだから気になっちゃうんだから
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一月前の事だ。
いきなり告白なるものをされた。
長曾我部と名乗る男に。
長身の大男で、社内でも目立っておったから存在は知っていた。
ただ、我との接点は皆無であった。
それが突然、目の前に立ち、顔を真っ赤にし、我を好きだと言ってきた。
信じる信じない以前に、ただ驚いた。
見掛ける度に、周りをいつも人が居り、慕われている姿を晒しておった。
楽しげに笑い、大股で闊歩しておった。
それが何故だ。何故、我を好きだと言うのだ。
全く理解が出来ぬ。範疇を超えるにしても限度があろう。
…だが。
我に告白してきた時の長曾我部は、普段見る自信満々な態度は見られず、息をするのも緊張していた。
顔は強張り、赤みが増し、その勢いは圧倒されそうであった。
しかし、真摯であった。
嘘とか裏だとか誤魔化しは無い様に見えた。
何かの罰ゲームで、我に告白など酔狂な事をしに来たとも疑っていたのだが。
しげしげと観察した結果、それはなさそうであった。
ならば、良いかと判断した。
『その言葉、しかと聞いたからな』
『おう、忘れないでくれよ』
『それで、付き合うとは具体的に何をすれば良いのだ』
『えっ? あっ…う〜ん、取り敢えず今度の日曜空いてるか』
『…休みだが、何かあるのか』
『俺も休みだからよ、デートしようぜ、付き合って初めてのデートをさ』
『そうか、良いぞ』
承諾の返事をした途端、待ち合わせの場所と時間を直ぐに決められた。
その実行の速さは良い。ぐすぐずとしているのは好まぬ。
その点では、長曾我部は良いと思った。
休日を誰か、他人と過ごす。
我の今までに無い事は、意外にも興味を惹かれた。
兎に角、長曾我部は色々と世話を焼いてくる。
大柄な、大雑把そうな外見には似合わず、細やかな心遣いをしてくる。
我に対し、押し付けがましさとの紙一重を計って接してくる。
二度目のデートの時もそうであった。
これが、付き合うという事ならば良いと思ったのだ。
但し、長曾我部が相手ならばと注釈が付く。
我はこの短い期間の間で、長曾我部へと好意を持ったらしい。
それに気が付いた。
だからこそ、三回目の長曾我部の誘いに付いて来たのだが…。
この周りからの視線は何ぞ。
飲み会と称された、長曾我部の知り合いの前は居心地が悪いものでしかなかった…。
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我が何とか席を立たずに済んだのは、隣に長曾我部が居たからだ。
隣で色々と我を気遣い、隣から笑い掛け、話し掛けてくる長曾我部が。
「…あのよ、ゴメンな」
「何がぞ」
「何かよ、こう引っ張り出すみたいなカンジになっちまってよ、毛利は苦手だろ、こーゆーの」
「得手ではあらぬ」
「だから、ゴメンな。俺の勝手でさ」
「良い、気にしておらぬ」
「ん、ありがとな」
小声でこっそりと、他に聞こえぬよう、我にだけに聞こえるよう、長曾我部が言ってきた言葉に、我は安堵を覚えた。
今までプライベートで他人との接触は避けてきた。仕事が出来れば良い、その一点のみだった。
しかし、長曾我部が隣に居ると、それだけでなくなる…気がしたのだ。
これが、心の変化というものなのだろうか。
「あー、2人で内緒話してる、いいなあ」
「あまり堂々とされると目の遣り場に困るんだけどねー」
「元親のクセになあ」
「仲が良いのでござるな、お二人は」
「お前等、うっさいっての」
気さく…いや、遠慮が無いのだろう。
口々に思った事をその場で出してしまう、長曾我部の知り合い達は楽しげに酒を呑んでおる。
陽気で、我に対し一線を引いた感が無い。
「これは仲が良い部類に入るのか?」
その雰囲気に飲まれたのか、我はその場で思った疑問を口にしてみた。
すると、隣の長曾我部の肩が大きく揺れ、周りの知り合い達が一瞬口を噤んだ。
そして、次には笑いの渦が湧き起こった。
「うん、仲良いんだよー、イイコトなんだよー」
「良かったね〜、心配する事ないって」
「ナカヨシコヨシってか」
「え? 何がどうしたのでござるか??」
不快な笑いではなかったので、我は隣に居る長曾我部へと視線を向けた。
そこには、酒に酔ったのか真っ赤な顔をした長曾我部が我を見ていた。
「仲が良いそうだ」
「あっ、ああっ」
どもりながらも大きく頷く長曾我部に、我は心の中でホッとしていた。
肯定された事を嬉しいと感じていた。
その嬉しさの儘、いつもの癖で両手でグラスを持ち、ゆっくりと中身を飲んだ。
この嬉しさを飲み込んで、確実なものになってしまえば良いと思いながら。
不思議な感覚だ。
不思議な男だ、長曾我部という男は。
我にこんな事を思わせるなど。
そんな事をつらつらと考えながら、我は己の身体が、長曾我部への方へと睡魔と共に傾くのを感じながら、止める事はなかった。
2013.04.03 back
とある出来事からのネタを瀬戸内変換しましたv
リーマン瀬戸内
甘いです、ナリ様が結構デレてます
ナリ様視点です