- 証 - 2 -


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会いたい
会いたくて仕方ない
だけど
それが一体誰に対してなのか
その誰かが判らないでいる

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もどかしい。
ずっと俺は、そんな小骨が喉に引っ掛かったようなモンを。
ちっこいガキん時から持っている。
けど、ナニがもどかしいのか。
それが全然、判らねえ。
だから余計に、もどかしくなっちまう。
そんな堂々巡りをずっとしてきてる。

ナンなんだろうか。
一番の古い記憶が、会わなくちゃ、だったんだよな。
探して、見つけて、会わなくちゃ、だ。
ナンだ? コレって?
だろ? ワケ判んねえだろ?
自分に上手く説明出来ねえモンを人に相談なんて出来やしねえ。
ナンで、俺はそのモヤモヤをずっとガキん時から抱えてきていた。
忘れたフリとか、考えねえようにしてみたりと。
それなりの努力ってのもしてきたけどよ。
やっぱ、忘れらんねえし、つい考えちまう。

俺は一体、ナニを探してんだろってな。
会いたいって気持ちが一番強いってコトは、誰かってコトだよな。
けど、その誰かが全く判んねえ。

誰だ?
誰なんだ?
俺が会いたい奴って誰なんだ?
名前も判んねえ。姿形も判んねえ。
ぼんやりとした輪郭も掴めねえ。
ただ、会いてえ。
会って、どうするかって具体的なコトは考えてねえけど。
会わなくちゃ、ってのがドンドンと強くなってくんだ。
漠然と考え出したのが、幼稚園ん時でよ。
小学校、中学校、高校から大学って、ずっと探してる。
特徴もナンも判んねえのによ。
自分でもヘンだったのは判ってんだが、止めらんねえ。
止める気も、全然ねえ。

ホントよ、ナンでなんだろうなあ。
そんだけ、俺にとって大事なモンなんかなあ。
こんだけワケも判らずってのに、執着してるってコトはよ。
大概、しつこいっつーか拘る性格だとは自覚してるけどよ。
このコトは、ちっと領域を逸脱してるわ。
おかしいっての判ってても、止めらんねえ。
けど、止めちまうのはダメだ。
そんだけは、判ってる。

だからさ、会ってくれよ。
俺が探してる誰かさんよ。
ずっと待ってんだぜ。アンタをさ。
一体、何年待たせんだ?
俺、学生から社会人になっちまったぜ?
もうそろそろよ、姿現してくれよ、俺の前に。

俺が会いてえんだ。
アンタもきっと同じなんだろ。
なあ、そうだよな。
待ってるよ、俺もアンタのコトを。


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「元親、用意は出来たか」
「おう、サヤカ、ちゃんと出来てるぜ」
「ネクタイが曲がっているぞ、いつまでも子供の気分でいるな」
「え? あれ?」
「仕方のない奴だ。大人しくしていろ」

姉貴のサヤカが傍に寄ってきて、俺のネクタイを締め直した。
この姉貴には、全くもって俺は頭が上がらねえのに。
就職浪人した俺は、派遣会社の所長なんかしてるサヤカのコネで今日から契約社員で仕事に有り付いた。

「これで良い」
「サンキュ」
「礼はしっかりと仕事を勤め続けてからして貰おう」
「判った判った、あんまプレッシャー掛けんなって」
「お前にはこれ位が丁度良い」
「あーもー」

イイ姉貴だよ、ホント。
この信頼に応える為にもと、俺はネクタイと共に気持ちを引き締めて出社した。

で、それはいいんだが…。
まさか、初出勤で俺の長年の悩みが解消するとは…。
夢にも思わなかった…。





2013.07.07
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瀬戸内転生話、アニキにょナリです
BGMは『Fate/zero ED Memoria』です
更に捏造してますので、宜しくです
お馬鹿なアニキ視点です