【切り取り線】 B
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自分で自分の制御が出来ない
そんな事があるわけがないと
思っても
それが事実なのだから
打ち拉がれるしか出来ない
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気付かれる筈がない。
いや、気付かれてはならない。
そう、己に言い聞かせてきていた。
だから、細心の注意を払ってきている。
長曾我部に、気付かれる訳にはいかぬ。
我が阿奴を目で追っているなどと。
気付かせてはならぬ。
気付かれたらと思うと、ゾッとする。
あの男の事だ、問い詰めてくるだろう。
どうしてだ、と。
ただの好奇心からで。
それに何と答えればいいのだ。
誤魔化す事など簡単だ。
話を逸らし、論点をすり替える事は出来る。
我には容易い事だ。
しかし…。
それだけでは済まぬ。
どうしても許し難い事がある。
我が、理由がどうであれ、長曾我部を見ていた事を本人に気付かれてしまう事だ。
我の詭弁に、長曾我部が納得しようとも。
我が、長曾我部を見ていた事を指摘されるなど。
到底、許容出来ぬものだ。
我の自尊心が許さぬ。
決して…っ!
…駄目だ、これでは。
落ち着かなくてはならぬ。
冷静になるのだ。落ち着くのだ。
焦りは判断を鈍らせる。
我は眼鏡を外し、教卓の上へと置いた。
指を顳?へと当て、軽く揉んだ。
息を一つ吐く。
ゆっくりと、長く。
妙な不安感を押し出す様に。
少しずつ、気持ちが落ち着いた所で、もう一度息を吐く。
無駄に力の入っていた肩の力を抜く。
精神を平常に戻す。
大丈夫だ。
いつもの我である。
テスト中の教室の中を一通り見渡す。
あと、10分で終わる。
問題は無い。無事に終わる。
そう思った時だった。
っ………!!!
油断をした。油断をした。油断を…。
何故、我は顔を向けたのか。
校庭へと。
長曾我部の居る方へと。
我へと視線を向けていた長曾我部へと。
そして。
視線が合った。
強い、射抜く様な、眼差し。
有無を言わせぬと視線が、伝えてくる。
捕らえられた気分に陥る、視線が。
我に一直線に向けられていた。
我は何が一番効果のある言い訳になるか、と。
言葉を必死で、考え始めていた。
背に冷たいものを感じながら。
2013.09.28 back
瀬戸内:現パロ、2人とも小学校教諭です
BGMはボカロの【キリトリセン】です
某R様のお誕生日プレゼントのつもりでリクエストを頂いた話です
さて毛利先生追い詰められる編ですv