【切り取り線】 C


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落ち着かない
はっきりとさせないと
気持ちが落ち着かない
これは
性分だから仕方ない

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視線が合った。
確かに合った。
その証拠に、俺は見た。
毛利の、あのハッとした顔。
何事にも動じませんって、いつもの顔が確かに驚いたのを。
俺は見た。
向こうがどう言い訳しようと、俺の記憶ん中に入ったからな。
俺の、心強い後押し情報になる。
そんなモンがって一蹴されるのは、確実だけどよ。
俺は確かに見たんだし、平気だ。

…と、なると次は、タイミングか。
毛利の動揺がいつまで続くのか判らねえ。
サッと俺から目も顔も背けたから、アッチもヤバいとは思ってんだろうな。
そこに、どう付け込むか…なんだが。
どうせなら、効果的に狙いてえ。
ヘタに頭のイイ奴だからよ、守り固めは完璧にしてくるだろう。

…でもよ。
さっきの態度の豹変を見る限り、俺の方が有利だ。
絶対に。
理屈より、これはカンだ。
あー、ナンか面白くなってきたな。
別にアイツの弱みを掴んで、ナニかってワケじゃねえ。
毛利もあんな風に人間的なトコ、ちゃんとあるんじゃねえかって。
そう思ったら、愉しくなってきちまった。
ただ、そんだけだ。
チョッとした悪戯心?
そんなモンぐれえだ。

「チカせんせーっ、チャイム鳴ったよー」
「おう、判った判った。ちゃんとボール片付けんだぞ」
「はーい!」

子供達が体育の授業の後片付けに、倉庫に走ってくのを確認してから。
俺はもう一度、毛利の教室の方を見た。
向こうは、丁度、終了の礼をしてるトコロだった。
遠目でも判る、毛利の真っ直ぐに伸びた姿勢が。
今日は、ナンかイヤに印象的に、目に付いた。



『鉄は熱いうちに打て』

別に持論じゃねえが、後回しが性に合わねえ性格してっからよ、俺は。
気になったら、さっさと確かめてスッキリしてえ。
その方が気分がイイ。
アレコレ考えんの、面倒臭えしな。

なんで、俺は放課後帰ろうとしたトコで。
毛利が自分のクラスの教室に入ってくのを目撃したからよ。
躊躇なく後を追ってった。
俺の質問・疑問に、毛利がどんな答を用意してあんのか。
単純に聞いてみてえ、だけだった。

まさかよ、こんなの聞かされるとはなあ…。

「長曾我部?」
「チョッとアンタに聞きてえコトがあんだけどよ」

単刀直入聞くのが一番だろ、と俺が口を開いたらよ。
毛利は、目に見える程サッと動揺した。
大体、俺が教室に入った時のあのビックリした顔。
聞きたいってコトに、過剰反応して青褪めた顔。
一体、ナンだってんだってのはあった。
けど、そん時の俺には、だったら…ってのがあった。
こんなチャンス、滅多にねえってな。

「今日…だけじゃねえな、毛利、アンタさ、ナンで体育の授業してる時に俺を見てんだ?」
「………」
「否定しねえってコトは認めたってコトだよな、つまり」
「………」

罵詈雑言、理論武装もナニもしてこねえ。
ただ、拳を握って、毛利を俺を見ていた。
いつもの、あのキツイ睨み方じゃねえ。
ナンだ…これ?
と、首を捻り掛けたトコで、毛利から爆弾が投下されてきた。

「黙秘権ってか?」
「…何を」
「は? ナンだって?」
「口止めとして、我は何をすれば良いのだ、長曾我部」

今度は、俺がビックリする番と。
ナンかが身体の奥の奥で、ニヤリとし始めた。





2013.10.15
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瀬戸内:現パロ、2人とも小学校教諭です
BGMはボカロの【キリトリセン】です
某R様のお誕生日プレゼントのつもりでリクエストを頂いた話です
長曾我部先生ってば、即行動編ですv