【切り取り線】 D


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何が失敗で
何が失敗ではないのか
混乱してしまえばしまう程
絡んだ紐が解けない様に
身動きが取れなくなる

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だから、感情など不要なのだ。
理路整然と物事を進める上に、邪魔でしかない。
それを理解しているからこそ、持論としているのだ。
それが一体、何事というのだ。
我の内心が焦りで、冷えてゆく。
表面を保つのに、全神経を使っている。

…信じられぬ。
…己の取っている行動が。

我はいきなり背後に現れた長曾我部の姿に、動揺したのだ。
まさか、こんなにも早く長曾我部が行動に移すなど。
油断した。
この男の何も考えずに動く性癖を失念していた。
これは我のミスだ。
回避せねば。

…しかし、どうやって。
…出方を待つのが得策か。

信じられぬ事に、背中を汗が流れるのを感じた。
これは、我が己で思っている以上に動揺しているという事なのか。
長曾我部に。
いや、現状打破は出来る筈だ。
我が、この男に負ける筈など無い。
理論整然とやり込めれば良いのだ。
いつもの如く…。



「へえ、つまりナンでもしてくれるってのか、毛利が」

我は何を口走った?
己に不利益な提案を自らするなど、愚か極まりない。
しかも、長曾我部はしっかりとそれを聞き取り、確認をしてくる。
これでは、言質を取られたという事だ。
何としても回避せねば。
この男の事だ、どんな理不尽を突き付けてくる判らぬ。

落ち着け。
落ち着くのだ。
内心の動揺を悟られてはならぬ。

「そんな顔すんなよ」
「…そんな顔、だと?」
「ああ、まるで俺がイジメてるみてえじゃねえか」
「我は苛められてなど」
「だよな、イジメじゃねえよな、これは」

長曾我部がクッと唇の端で笑う。
嫌な笑い方だ。今までに、見た事がない。
又、背筋を汗が流れていくのを感じる。
我は無意識に身構えていた。

「そんな緊張すんなよ、無理難題なんて言わねえからよ」
「緊張など…」
「いいからよ、目、瞑れ」
「目…を瞑れ、と?」
「ああ、俺がイイって言うまで瞑ってな」

目を瞑るだけ、と安易な要求に我は意図を考える事もせずに。
その場で、目を閉じた。
これで、要求は聞いたのだ。これで済むのだ、と。
安直に思い込んだのだ。
それが、甘かったと思い知らされたのは。
長曾我部の気配を身近に感じた途端に、顎をすく上げられ。
唇に何かを…長曾我部の唇が押し当てられたのに。
驚く暇もなく、手首を掴まれ拘束された後だった。


我の抵抗の呻き声が。
放課後の教室に、微かに流れているのを。
強制的に聞かされる、屈辱に。
我は包まれてしまっていた。
抜け出す手立ても何も出来ない儘に。





2013.10.16
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瀬戸内:現パロ、2人とも小学校教諭です
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某R様のお誕生日プレゼントのつもりでリクエストを頂いた話です
毛利先生ってば、隙が有り捲り編ですv