【切り取り線】 F
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追い詰められる
それは必死で探す出口を
悉く潰されていく恐怖を
味合ってしまう事だ
強制的に
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痛みを感じる。
手首に、背中に、身体全体に。
軋む、という表現が合う程の圧力を掛けられている。
今、我を押さえ込んでいる男に。
一体、何が。
我に、起きているというのか。
身動きが出来ぬ。
声が出ぬ。発せられない。
それが、全て長曾我部の所為だと判ってはいるが。
回避の手立てが無い。
押し返そうにも、手首を握られている為に出来ぬ。
叫ぼうにも、唇を塞がれており…しかも、長曾我部の、唇に。
信じられぬ。
どういった流れで、こうなるのだ。
こんな事になってしまったというのだ。
我は、長曾我部と、関わりたくなどなかったというのに。
「…毛利」
唇が解放され、我は大きく息を吸った。
息苦しさを緩和させる為に、忙しなく呼吸をする。
その我の様子を見ていた長曾我部が、耳元で笑ってくる。
「アンタ、可愛いトコあったんだなあ」
「…っ、なに…を」
咳き込んでしまい、上手く言葉が言えぬ。
長曾我部の手が、我の背をさすってくる。
「ムキになってよ、可愛いじゃねえか」
「ば、馬鹿な事を…」
「俺のコトもずっと見てたしな、この教室からよ」
「見、て…など」
「ナイ、なんて言わせねえぜ。見てたろ? アンタは俺を」
断言された後に、耳を噛まれてしまった我は。
否定など出来ず、全身を跳ね上げさせた。
耳からの痛み。
心への動揺。
呼吸が再び苦しくなってくる。
長曾我部の隻眼から、目を逸らせる事も出来ぬ。
射抜かれてしまいそうだ。
痛みが、じくじくと全身に広がっていく。
冷ややかに。
何処かへ堕ちていく感覚に襲われる。
「そんな切羽詰まった顔すんなよ。別に確認で責めてねえだろ、俺は」
認めてはならぬ。
頷いてはならぬ。
己に言い聞かせる。
此処で、長曾我部の言葉通りになどしたら、どうなるか。
これ以上の、我に不利な悪化の一途を辿るなど。
出来ぬ。
するものか。決して。
「あのさ、そーゆーのって無駄な抵抗ってつーか、そそられるつーか」
「…ち、長曾我部っ」
「自業自得で、半分、責任あっからな、アンタにも」
「や、止めっ…」
身体が一瞬の浮遊感に襲われた後、大きな音を耳にする。
己が男に、引き倒された音に。
それは、まるで授業の始まるチャイムの音の様に。
これから、される行為の始まりの音となっていた。
我の藻掻きは、全て、長曾我部に押さえられたいた。
まるで、吸い込まれていく様に。
恐怖と喜びを綯い交ぜにした複雑な心境の儘に。
2013.10.18 back
瀬戸内:現パロ、2人とも小学校教諭です
BGMはボカロの【キリトリセン】です
某R様のお誕生日プレゼントのつもりでリクエストを頂いた話です
毛利先生が、とってもピーンチ編ですv