【本当の気持ち】 @


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好き
嫌い
大好き
大嫌い
どっちも自分の気持ち

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中学の三年に進級した春だった。
お隣の幼馴染みが、実家に戻ってきた。
大学の進学と同時に、一人暮らしをすると家を出ていたので。
又、以前の様に顔を見る事が出来ると思うと嬉しかった。

ずっと、好きでいたから。
我は、元親が。


「よっ、元就、久しぶりだな、元気だったか」
「見ての通りぞ」
「ナンだ、ちっとも変わらねえなあ」
「元親も、変わっておらぬではないか」
「そっかあ?」

昔からの、元親の癖で、我は髪をくしゃりと撫でられた。
久しぶりのそれに、我は目を瞑って嬉しさを隠して。
次に、元親を睨み付けた。

「髪が乱れる」
「ナンだよ、前は俺にこうされんの好きだったじゃねえか」
「以前とは違う」
「ナンだあ、そんな冷たいコト言うなよ」
「勝手に触るからぞ」

実家に戻って来てはいたが、なかなか元親とは再会していなかった。
忙しいのだろうと、思い、己から会いに行く事は出来ないでいた。
それが、受験勉強の為に図書館に出掛けようとした所で鉢合わせしてしまった。
あまりに、急な事で我の内心はパニック状態であった。

「前は平気だったじゃないか」
「だから以前は以前ぞ」
「一年前だろうが、そんなコロッと変わるのかよ」

変わったのでは無い。
どう接して良いのか、判らぬのだ。
一年という時間の経過は、途惑ってしまうのだ。
元親が、以前と変わらない儘でいるから余計に。
我一人があたふたとしてるのが、情けないのだ。

「で、元就はドコに行くんだ?」
「勉強をしに行く、図書館に」
「あ、そっか。元就、受験生か」
「では、失礼する」
「お、おい、待てよ」

落ち着かない。居たたまれない。
再会出来て嬉しい気持ちは、確かにあるのだが。
元親の傍に居られぬ。
可愛げの無い事ばかりを口にしそうだ。
いや、もうしている。
これ以上だけは、避けたい。
だから、歩き出したというのに、元親は何を考えているのか。
直ぐに追い着いて来て、隣を一緒に歩き出した。

「何用ぞ」
「別に用はねえけどよ」
「ならば、着いて来る理由はないであろう」
「だーから、久しぶりなんだからイイじゃねえか」

良くなど無い。
なのに、元親は隣に居るのが嬉しさが募る。
我は無言で、歩き続けた。

「勉強、見てやるよ」
「………」
「で、勉強が終わったらケーキ奢ってやっから」
「………」

以前と同じ、だ。
元親は本当に変わっておらぬ。
いつもいつも、大事にされていた。
幼い頃から、ずっと。

しかし。
この一年の空白が。
我に寂しさと諦めを覚えさせていた為に。
どうしても、素直になれぬ。

我は、どうすれば良いのだろうか。





2013.10.22
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