【本当の気持ち】 A


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好きとか嫌いとか
そんなの決まり切ってる
判り切ってる
好きだって
何故それが伝わってないのだろうか

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お隣さんの元就は、4つ違いの幼馴染みだ。
弟2人がいる俺に取っては、女の子の元就が可愛くってよ。
ガキん時から、ずっと守ってやんなきゃって存在で。
大事で大切で、可愛い妹みたいなモンだった。

ちっこくて、突くと直ぐ泣きそうな外見なんだけどよ。
実際は、すっげ気が強くて、はっきりしてて。
超マイペースな元就なんだけどよ。
生まれた時から知ってっから、その所為か。
元就は、俺にずっと懐いてきてた。
親の次に、俺と一緒の時間が多いんじゃねえか。

『モトチカ』

そう俺のコト呼んで、後を付いて来てた。
呼び捨てされてたワケだが、別に気にはなんなかった。
辿々しい口調で、小さな手を必死で伸ばしてよ。
俺を追っ掛けてくる姿を見たらよ。
他のコトなんか、どうでもよくなっちまう。
実際、そうだったしな。

小学校は2年間、一緒に登校した。
俺の卒業の時に、嫌だと泣いた元就を宥めたよなあ。
俺も一生懸命に。
中学からは学年差があったモンだから、一緒は無理だった。
けど、お隣さんだからよ。
時間作って、一緒にいた。
ホントの兄妹みてえだって、周りからずっと言われてたっけな。
悪い気はしなかった。
元就の一番の位置は、俺のモンだってコトで。

それが、俺が高校に入って、少しずつ時間と距離が出来て。
大学受験もあったから、元就があんま傍に寄って来なくなったのに。
気付いてもいたけど、俺も忙しかったしよ。
無事に第一希望の大学に受かって、通学の関係で家を出たのもあってよ。
完全に元就と離れた状況が出来ちまったワケだ。

別に、忘れたワケじゃねえ。
元就は、俺に取っての特別は全く変わらねえんだし。
それは、元就も判ってると思ってたんだけどなあ。
2回生になって、自宅から通える校舎の方に移ったからよ。
帰って来たワケなんだが…。

元就のツンツンが、ツンドラ風味になってた。
俺、ナンかしたっけか???

こう思っちまうのは、元就が俺を見ようとしねえ態度ありありだからだ。
以前なら口にしないだけで、俺の傍にいるのは嬉しいってしてた。
チャンと笑ってくれてたし、会話も出来てた。
ナンか、今は目の前でドアをピシャッと閉められたカンジ、なんだよなあ。
素直さが、どっかいっちまってる。

なあ、どうしたんだ?
元就ってば、よ。

隣を無言で歩く元就を見てみる。
一年前のまんま、可愛いのは同じ。
けど、元からの可愛さに綺麗ってのも欲目ナシに加わったと思うわ。
これじゃ、誰だって振り返る。見ちまうだろう、くれえに。

背は相変わらず、ちっこいまんまだけどよ。
具体的にナニがって言えねえけどよ。
磨きが掛かり始めてるって、カンジだ。

俺の、小さい元就が。


「なあ、元就」
「何ぞ」
「ナンかあったか?」
「何も無い」
「そんな突っけんドンにすんなよ」
「しておらぬ」
「ウソつけ」
「嘘では無い」

拗ねてるだけ、には取れねえなあ。
コレは。

さて、どうしたモンかと。
俺は頭を掻いた。





2013.10.24
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