【本当の気持ち】 B


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素直って何なのだろう
以前は言えた事が
今は言えない
言う事が出来ない
これが素直じゃないって事なのだろうか

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隣を歩く元親を盗み見る。
決して、気付かれぬ様に注意を払って。
背は元より高かったが、又、伸びただろうか。
肩幅も広くなった気がする。
腕も逞しくなった様で、手も指もごつごつした感じになっている。

一年。
たった一年の間に、元親は変わってしまっている。
きっと、外見だけでなく中身も変わってしまったところがある気がする。
そう考えると、気持ちが下を向いてしまう。
そう思ってしまう、俺が嫌になる…。

「どうしたんだよ、元就」
「…何でも無いと言っておる」
「そんなしょげた態度で泣きそうな顔してウソ吐くなって」
「嘘など吐いておらぬ」
「あのさ、俺が何年お前と幼馴染みしてると思ってんだよ、バレバレだって」
「だから、嘘など」
「いいから、言ってみ? 聞いてやっから」

聞く?
何をだ?
聞いてどうするというのだ。
第一、我にも判らぬものを口にするなど出来るわけがないではないか。
そうだ、昔から元親はそうなのだ。
勝手で。
本当に自分勝手で。
勝手に我の気持ちを決めてしまう。

違うのに。
違うのに。
そうではないというのに。
我の本当の気持ちなど、判らぬくせに。
気付いてなどいないくせに。

「元就?」

我を呼ぶ声。
これは変わっておらぬ。
我は元親に呼ばれるのは、心地良い。
誰に呼ばれるよりも、元親に呼ばれる事が。
だから。
だからこそ。

「具合悪いのか? 顔色悪いぞ、おい」

誰の所為だと思っておる。
全部。
それこそ、全部、元親の所為ぞ。
我をこんな気持ちにさせているのは、元親だ。
全部、元親の所為だというのに。
元親自身は気付いていない。
それが悔しく、何かが迫り上がってくる。
気持ち悪く。
これ以上、抱えてなどおられぬ。

「元就、大丈夫か? おんぶしてやろうか?」

元親が我の前に回り込んで、顔を覗き込んでくる。
目が合う。
我の好きな、元親の青い目と。
思わず、涙が零れてしまった。

「元親の馬鹿者っ!」

思いっ切り突き飛ばす。
不意を突かれた元親がバランスを崩したのを機に、我は走り出した。
思いっ切り。
息苦しさも、最悪の気分も、自己嫌悪も。
全て、振り切りたくて我は走って、自宅へと逃げ込んだ。

我は元親から逃げたのだった。





2013.10.27
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