初めての恋が


★。、::。.::・'゜☆。.::・'゜★。、::。.::・'

まるで
ドラマのような恋
そんなモンするなんて思わなかった

★。、::。.::・'゜☆。.::・'゜★。、::。.::・'


元就と付き合い始めて、一年。
出合った時、高校の2年だった彼女は3年生になっていた。
サラリーマンしてる俺は、25歳になったトコだった。

一年前。
俺がうっかり忘れた携帯を拾ってくれたのが、元就だった。
仕事に支障が出て不便だろうと、わざわざ会社に届けに来てくれた。
学校の帰りに。

第一印象は、生真面目そう。
良くも悪くも、ケースの中に飾ってある日本人形。
サラリと動く様に、俺は見惚れた。
今でも、そん時の事はしっかり覚えてる。

ありがとう、と。
助かった、と言った時、元就は良かったと、緊張を解いて柔らかく笑ってくれた。
きっと、その笑顔に俺は惹かれたんだろう。

お礼にと、お茶を奢るからと。
半ば、強引に誘った。初めは遠慮から断られたが、粘り勝ちをしてOKを貰った。
そこから少しずつ始まった、俺達の付き合いは。
端から見たら、ちぐはぐに見えたかもな。
けど、俺は次もその次もと、元就の都合と自分の都合を調整して。
日が空いても、会っていた。会い続けていた。
繋いだ縁を途切れさすものか、ってな。

元就は、口下手で、口数が少なくて、人との付き合いが苦手で。
それでも、一生懸命、俺と付き合ってくれた。
それがいじらしくて、可愛らしくて。
俺は元就を大事にしてやりたくて、大事にしてた。

少しずつ近付けていく距離。
隣を歩く彼女の歩調に合わせて、歩く事も。
年齢差からくるジレンマも、衝動的な欲求も。
合わせる事も抑える事も。
元就の為なら良いと、出来た。

…我慢のキライな俺が、だぞ。

元就が俺に微笑んでくれる数が、増えたから、さ。
少しずつ、自分の事を俺に話してくれて。
俺の話を聞いてくれるようになったから、さ。
それが、どんな小さな事でも俺は満足していた。

そして。
それが、ずっと続いていくモンだと。
無条件にも思っていた。


  ★。、::。.::・'゜☆。.::・'゜★。、::。.::・'


マヌケにも、好きだと伝えていなかった事に気付いたのは。
俺が親父が倒れ、家業を継ぐ為に実家に帰る事になってからだった。
今の仕事は修行も兼ねていたし、家業は継ぐ気でいたから何の問題もなかったが。

――元就。

アイツとの事が、俺を悩ませた。
まだ、高校生の彼女に俺の事情を押し付けられない。
まだまだ、子供なんだ。だから、ままごとみたいな付き合いをしていたんだ。
俺に合わせようと、背伸びをさせたくなかった。
元就に、学生と社会人の差の負荷を負わせたくなかった。

だから、まだ暫くは見守るスタンスでいた。
それが、裏目に出た。

本音を言えば、俺に付いてきて欲しい。
けど、それは言えねぇ。
言ったら、駄目だ。
元就に辛い思いをさせるだけだ。
板挟みになるのが、目に見えてる。

元就は、まだ高校生なんだ。

俺の都合だけで、奪えない。
言えるワケがない。

だから、淡々と告げた。
俺の事情を、家に帰ると、今まで付き合ってくれて、ありがとな、って。

元就は、そうか、と一言呟いた。
見上げてくる眸が、泣きそうになってたのは。
俺の気の所為だと、思う事にした。

じゃないと。
俺は元就をかっ攫っちまう。
元就の意志を無視して。

それは、したくねぇ。

矛盾してっけど、俺は元就が大事なんだ。
だから、今は。


サヨナラ、だ。


何の約束もしてやれねぇ、俺の。
元就にしてやれる、今、精一杯の事だ。

だから、抱き締めずに。
俺は元就の髪をそっと撫でた。
上手く出来たか判らない、苦笑いと共に。





2010.07.13
                  back
リーマン元親×女子高生元就 元親視点
真剣な分、純愛してます…