orange 〔1〕
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気になって
気になって
どうして気になるのか
判らない
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高校へと入学し、一月が経った。
兄の通った高校で、進学校でもあり、自ら望んで入った所だ。
なので、何も不満は無い。
我に取って、学ぶ為に通っている場所というだけだ。
なので、クラスメイトは構わないが、それ以上のものは不要だった。
友人と称するものは、正直煩わしい。
元々、人間関係自体が苦手なのだ。
わざわざ、積極的に作りたいと思わなかった。
――あの男を知るまで。
長曾我部元親は7組で、我は3組でクラスが違う。
理系と文系で、校舎も違う。
だが、昇降口にある靴箱が向かい合わせの位置にある為。
時折、下校時に姿を見掛けた。
何しろ、容姿が目立つ。銀の髪に、隻眼。
そして、背が高い。
いつも誰かしらと共に居て、騒いでいる。
笑っている。軽口を叩いて、周りの人間と楽しそうにしている。
我とは違う。それが第一印象だった。
関わり合う事は、決して無いだろう。
そう思っていた。
それで良かった筈だった。
いつからか。
楽しそうに笑う声。屈託なく人と接する姿、が。
目に付くようになった。
気に掛けるようになっていた己に、驚いた。
それらに気付くと、疑問が湧く。
我はどうしたいと、思っているのだろうかと。
話してみたいのだろうか…。
けれど、話す事など無い。
話題どころか、共通点も無い相手に対して、何を話すと言うのか。
結論は簡単に付いた。
どうする事も無い、と。
話し掛ける気は無いのだ。話す事が無い以上。
だから、これまで通りに。
時たま、見掛ける人間。
それ以外、何も無い。
そう我は納得したのだ。
なのに。
何故だ?
どうして、そうなったのか…。
意味が判らず、我は混乱してしまったのだ。
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金曜日、一週間の終わりの日だった。
図書室に寄り、思わず時間を取り、下校の鐘が校内に響き渡っていた。
早く帰らねばと、靴箱に我は向かった。
すると、そこに長曾我部が居た。
一人で。
どうしたのだろうかと、内心で思った。
一人で居るところなど、見た事など無い男だ。
だが不思議に思いつつも、我が関する事では無い為。
靴箱から靴を取り出し、履いて帰ろうと。
長曾我部の前を行き過ぎようとした時だった。
「毛利」
名を呼ばれ、ぎょっとした。
あまりの驚きに、我は動きが止まってしまった。
「え、あのさ、毛利でいいんだよな? アンタの名前」
「………そうだが」
何故、長曾我部が我の名を知っているのか。
その疑問が、頭の中を渦巻くが。
我は務めて冷静を保ち、長曾我部へと振り返った。
「あっ、俺は長曾我部っていうんだけどさ」
それは知っている。
友人と称する連中達と大声で呼び合っていた。
聞こうとしなくても、聞こえていた。
「いきなり声掛けてゴメンな。けどな、アンタに言いたい事があってさ」
「我に? 何をだ?」
笑いながら、真っ正面へと長曾我部はやって来た。
近くで見ると、長身なのが改めて判る。
思わず、見上げてしまった。
「うん、俺とさ、付き合って欲しいんだ」
言われた言葉の意味が判らず、我はその場に固まった。
付き合う?
それは一体、どういう事なのだ?
「ホント、いきなりでゴメン。
だけどさ、俺、マジだからさ、付き合ってくれねえか?」
「………構わぬが」
「えっ、ホント? やったあ!」
何故、こう答えてしまったのか判らぬ。
判らないが、真っ直ぐに見下ろしてくる長曾我部の眸に。
初めて気付いた、蒼の色に。
我は逸らす事が出来なかった。
2011.01.06 back
元親×元就、学園パロ、青い春な話
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