orange 〔15〕
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何が正しいのか
何が間違っているのか
自分と他人の判断の違いが
どうしても判らない
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苦しい苦しい苦しい。
離せ離せ離せ。
…辛い、のだ。
…辛くて、仕方無いのだ。
長曾我部の振り解けない腕の中で、我は唇を噛み締めた。
答の出ない己に向けて。
繰り返される謝罪。
長曾我部の声が震えている。
いつもの明るさの欠片もあらぬ。
ただ、ひたすら我に謝罪してくる。
その悲痛とも言える声が、痛みを我に突き刺す。
何故だ。
何故、長曾我部が傷付いた声を出すのだ。
それが判らぬ。理解出来ぬ。
今更、何故、我に構う。
我はもう良いと言っているというのに。
【大変】な【迷惑】は放っておけば良いというのに。
我を…我をこれ以上、惨めにさせるなっ!
狙いを確と定め、我は長曾我部の足を踏み付け。
腕の力が緩んだ隙を付き、我は長曾我部から身を翻した。
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「毛利っ、待ってくれっ」
背後で、長曾我部が叫ぶ。当然、無視をする。
痺れた感覚のする己の身体を、足を必死に動かした。
長曾我部から遠離る為に。
「毛利っ」
嫌だ。もう呼ぶな。
我を呼ばないでくれ、長曾我部。
…頼む。
「毛利っ、頼む」
え? 今、何と…。
「毛利っ、頼むから、逃げないでくれ。
頼むから、俺の話、聞いてくれ」
頭の中は警報が鳴り続けていて、長曾我部の言葉を聞くなとしている。
なのに、足が止まる。それこそ、我の意志から離れた如くに。
ピタリ、と。
一歩も踏み出せず、そこに立ち尽くす。
「毛利っ」
振り返る事が出来ない。身体を動かす事が出来ない。
我はどうするべきなのか。いや、どうしたいのだ。
己の事だというのに、判らないなど…と。
我は一体、どうしたのだ。
長曾我部が関わると…我でなくなるのか。
「毛利、ありがとな」
背後から、長曾我部の手が回ってくる。
先程みたいな力任せではなく、緩やかに。
まるで、壊れ物を扱う様に。
「聞いてくれるか、俺の話」
喉が張り付いて声が出なかった。
なので、我は逡巡の後に一つ頷いた。
背中から、大きく長曾我部が安堵の息を付いたのが判った。
「あのよ、言ったのは確かなんだけど、それ、本心じゃねえから。
それだけは、信じて欲しいんだ」
「…思っていたから口にしたのではないのか」
「違うって、そうじゃねえよ」
「…なら、何故だ」
聞きたいと、思った。
言い訳なのかもしれないが、理由を。
長曾我部の口から聞けば、区切りがつく。
このあやふやな感情に。
「あー、それはその…えーっと…」
?
急に長曾我部の勢いがなくなり、しどろもどろになった。
我は思わず、後ろを振り返り、長曾我部を仰ぎ見ると。
顔が赤くなっており、我は驚いてしまった。
「長曾我部?」
「あ、ちょ、チョイ待ち」
「話せないなら無理に話さなくとも良い」
「違うって、話すって、毛利に誤解されたまんまなんて冗談じゃねえ」
見れば見る程、長曾我部の顔が赤くなっていく。
落ち着きないのは、いつもの事だが。
この慌てぶりは、何なのだろうか。首を傾げてしまう。
「だーから、俺が本心じゃねえコトを言ったのは、照れからなんだって」
「照れ?」
「照れるに決まってんじゃねえか、アイツ等判っててからかってくんだからよ」
「何をだ?」
「俺が毛利を好きなコトをだよ」
今、長曾我部は何と言った?
好き、だと? 誰を? 我の事を?
目が見開いていく。驚きと初めて聞く言葉に。
「毛利?」
「其方は我を好きなのか?」
「今更、何言ってんだよ、付き合ってんだから好きに決まってんだろっ」
もう一度、告げられた内容に我は身体も思考も、固まってしまった。
2011.08.05 back
元親×元就、学園パロ、青い春な話
元就視点、迷いながらもアニキと向き合おうとしてますよv