orange 〔16〕
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表現出来ないものが広がっていく
心の中に
切なさと
甘さと
幸福感に包まれるものに囚われていく
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俺はマジマジと毛利の顔を見た。
俺のコトを振り返って、見上げてきていた。
本気で、ビックリ顔になってる毛利の顔を。
えーと、俺の発言でこうなったんだよな…。
つまり、毛利からしたら付き合ってはいるけど。
何で付き合っていたかを知らなかったってコトか?
ちょ、一寸待て…それって友達ってコトなのか?
俺は毛利が好きで、申し込んで、OK貰って、付き合ってるって。
そう、ずっと思ってたのが。
毛利には違うコトだったってのか?
じゃ、俺って毛利からしたらナンだったんだ?
そこまで考えて、俺は手に力がこもっちまった。
後ろから捕まえていた毛利の身体をぎゅっとしちまった。
「…初めて、聞いた」
ポツリと、毛利が言葉を漏らした。
その呟きは、さっきまでの勢いがなくなってて。
呆然とした感じだった。
「長曾我部が我を好きなどと…知らなかった」
続けられてく言葉は、悲しそうな響きがあって。
俺まで悲しくなってきた。
もしかしなくても、俺が毛利をここまで追い込んでいたんだよな。
だったら、俺のするコトはひとつだろ。
俺はもっと力を込めて、毛利の身体を抱き締めた。
「―――ん、俺、毛利が好きだ、大好きなんだ」
「長曾我部?」
「好きだから、付き合って欲しいっ言ったんだ。
それに毛利がOKしてくれて、嬉しくってよ。
俺、肝心なコト言ってなかったな…ゴメン」
「長曾我部…」
目に見えて狼狽えてく毛利が、可愛い。
それを見てたら、俺は俺の都合のイイように解釈してえ。
毛利がこんな感情的になったってのは。
俺のコトが…って。
「毛利」
「何だ」
「毛利は何でOKしてくれたんだ?」
「…判らぬ」
「え? 判らないって」
「ただ、あの時、嫌ではなかった…のだ」
「イヤじゃなかった? じゃ、今は?
今、毛利は俺のコトどう思ってんだ? 教えてくれよ」
火が付いたように、今度は毛利の顔が真っ赤になった。
あ、すっげ嬉しい。嬉しさがどんどん大きくなってく。
「えっと…キライか?」
賭けに出て、反対のコトを言ってみる。
それに毛利は、直ぐに大きく左右に首を振ってくれた。
あー、良かった。大丈夫だ。
「じゃあさ、スキ?」
確信を持って聞くと、毛利はブンッと前を向いて。
俺から顔を見えないようにしてから、小さく頷いた。
こん時の喜びって、ナンて言やあイイ?
腹から突き上げてくる感動。
止めらんない衝動。頭に血が一気に昇ってった。
「毛利っ!」
思いっ切り、毛利の身体を反転させて俺の方へ向かせる。
いきなり過ぎてで、驚いて俺を見上げてくる毛利と。
ばっちりと、目を合わせた。
さっきより、ずっと真っ赤になってる毛利の顔。
あー、もー、大好きだって。
正面から、抱き締める。
身長差があっから、毛利の顔が俺の胸んトコに丁度治まる。
それを俺は、大事に大事に抱き締めた。
「俺もスキだ、スキだぞ、毛利のコト」
「………」
さっきので精一杯だったんだろうな、毛利には。
そっかあ、照れ屋で恥ずかしがりなんだ、毛利は。
ナンか、次々と毛利のコトが判ってく。
それが嬉しくて嬉しくて、俺は調子に乗ってく。
「なあ、毛利」
「…何だ」
「これから、ちゃんと言うな、毛利のコトをスキっての。
何回でも沢山言うからさ、聞いてくれよな」
「…わ、我は」
「聞いたら返事してくれればいい」
「…それで、良いのか」
「ウン、いいんだ」
「…判った」
毛利の言葉に、顔が緩む。
俺を調子に乗せたのは、毛利自身だからな。
「じゃあさ、キスしていいか」
耳元に囁いてやると、毛利は固まって、ジタバタして、又固まって。
おずおずと、俺を見上げてきた。
一大決心をした顔で。俺を真っ直ぐに見て、コクンと頷いてくれた。
「スキだ」
「…我も、好きだ」
一番聞きたかった言葉を言ってくれた唇に。
俺は恭しく、心を込めてキスをした。
2011.08.09 back
元親×元就、学園パロ、青い春な話
元親視点、頑張った結果が出ますv 最終話です!