orange 〔2〕
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気になる
気になる
どんな声で話す?
どんな顔で笑う?
全部が知りたくて仕方がない
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高校の入学式ん時。
初めて見た瞬間に一目惚れしてた。
俺はアイツに。毛利元就に。
男なのは、制服を見りゃ判る。
ブレザーときっちりと絞めた制服のタイ。
どっからどう見ても、男なんだけどよ。
小柄で細くって、髪がサラサラしてて。
人形みたいなツンとした顔が、俺の好みストライクだった。
好きになっちまったら、男だろうが全然構わなかった。
大抵、一人でいる。
クラスも違う、校舎も違うんで、積極的に見つけに行かねえとなんない。
んで一人なのに、全くそれを気にした風でもナシ。
時たま、一人決まった奴が話し掛けてるトコも見るが。
会話を楽しんでるって感じは全くねえ。
ダチとふざけて笑うっての、した事ナイんじゃないか?
そんな感じだった。
だからってワケじゃないんだけど、気になって仕方なかった。
俺が傍にいてやりたくなった。
隣にいて、冗談言ったり、笑ったり、そんな事してみてえ。
アイツと。
何とか話し掛けようと、チャンスを狙っていたんだが。
隙ってモンがナイ。
一番の接点が、下校時の靴箱なんだけどさ。
いっつも、すーーーっと、目の前を通り過ぎてかれてよ。
声を掛ける暇がねえ。
横顔と後ろ姿を見送る毎日に。
政宗や慶次やらに、呆れられた叱咤激励をされてた。
『Hey! 何時になったら声掛けるんだよ、元親は』
『俺が応援してあげるからさあ、頑張ろうよ』
うっさいうっさい、余計なお世話だ。
情けナイのは、俺が一番判ってんだよ。
失敗したくねえから、腰が退けてんだよ。
絶対、上手くいきてえんだ、俺は。
だからさ、タイミングを計ってんだよ。
急いては事はを仕損じるって言うだろうが。
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やっと決心を固めた金曜日。
放課後、他の奴等をさっさと帰して。
俺は靴箱で、毛利を待っていた。
授業終了と同時にダッシュで、ココに来たのはイイんだが。
待てど暮らせど、肝心の毛利が来ねえ。
まさか、もう帰っちまったのかと思ったが。
靴箱には靴がある。
絶対、校内にはいる。
その確信で、顔見知りに声を掛けられたり、何してんだとからかわれたりして。
俺は毛利を待っていた。
そして。
外が少しだけ夕焼けに染まり始めた時。
下校のチャイムが静かに鳴り始めた時。
毛利が姿を見せた。
いつもと同じ無表情。
俺がいるのに、気付いてもいないんじゃないかって思うくらいので。
背筋を真っ直ぐにして歩いて来る。
俺はそれに心挫けねえように、深く息を付いた。
他、誰もいねえんだ。
絶好のチャンスだ。
ココでキメなきゃ、どうすんだ、俺。
思い切って、名前を呼んだら振り返ってくれた。
けど、凄く不思議そうな顔をしていたんで。
確認も含めて、もう一度名前を呼ぶと、コクンと頷いた。
…えーと、何だ、その可愛いらしい仕草は。
至近距離で、こんなのを拝めて俺は舞い上がりそうだった。
自分の心臓の音が聞こえる。
そんだけ、緊張してる。
けど、このチャンスを逃してたまるか。
俺は一気に畳み掛ける事にした。
余計な言葉はいらねえ。
付き合ってくれ、と。俺と付き合って欲しい、と。
ストレートに毛利に告った。
最終審判を迎える気分で、毛利の返事を待っていると。
OKが貰えた。
色々考えていた万が一の口説き文句が、パアーッと飛んでった。
う、嘘じゃねえよな。ホントだよな。夢オチナシだぞ。
一歩踏み出して、真っ正面から毛利の顔を見る。
毛利を俺を見ていて、すっげえ嬉しくなった。
「…それで、我はどうすれば」
「え? どうすればって?」
「…付き合うというのは、どうすれば良いのだ?」
「あ、取り敢えず、一緒に帰ろうぜ」
「今からか?」
「うん、そうそう」
「…判った」
まだ、手を繋ぐのは早いか。
少しずつ段階踏んでけばイイよな。
そんな事を考えながら、俺は毛利の隣をキープした事に満足して。
一緒の初下校に、最高の気分だった。
2011.01.07 back
元親×元就、学園パロ、青い春な話
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