orange 〔3〕
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隣に立つ
右側にある存在
意識ばかりしてしまう
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緊張する。どうにも落ち着かない。
右を歩く長曾我部の存在に、右ばかりを意識してしまう。
校門を出て、駅へと向かう。
一緒に帰ろうと言われ、断る理由が無かったからだ。
駅までは通学路なのだ。道は同じだ。
ただ、いつも一人で歩く道だ。
だからだろうか、この不可思議な気分が湧くのは。
隣を見ると、丁度長曾我部も顔を向けてきたところだった。
「あ、あのさ、毛利はさ」
「何だ?」
「何が好きだ? つーか、好きなモン、教えてくれよ?」
「何故だ?」
「あ、えーと、その〜、毛利の好きなモン知りてえなって」
知ってどうすると言うのか。意味が判らぬ。
けれど長曾我部は、我からの答を待っていた。
「なあ、ダメか?」
「いや、駄目ではないが」
「だったら、教えてくれないか?」
「直ぐには、思い付かぬ」
は? と、長曾我部の目が丸くなった。
しかし、思い付かぬものは思い付かぬ。
黙っていると、長曾我部が言葉を継いできた。
「あ、じゃあ、だったらさ思い付いたら教えてくれよ、な?」
「それで良いのか?」
「ああ、それでイイって」
「そうか、判った」
そう返事をすると、何が嬉しいのか。
長曾我部は満足気な顔を見せる。
それを見ると、我も何故か嬉しいと感じた。
手を繋いでもいいか、と言われ。
頷いた己に、驚きを隠しながら。
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あの後、駅に着き、そこで別れた。
長曾我部とは反対方向だったからだ。
駅のホームは向かい合わせで、我の方が先に電車が来た。
長曾我部がずっと手を振っていたのが、見えた。
それに振り返す事をせず、我は帰宅した。
両親は早くに他界しており、たった一人の肉親の兄は仕事が忙しい。
多分、今日も遅くなるだろう。
それには慣れているから、一人で家に居るのは苦にならない。
自室へと戻り、制服をクローゼットへと仕舞う。
机へ向かい、宿題と明日の支度を済ませる。
そして椅子に座った儘、今日の事…放課後からあった事を思い出してみた。
一気に色々有りすぎた気がする。
溜息が出る。疲れている証拠だ。
何故…。
何故、我は承諾をしたのだろう。
付き合うの意味が、よく判らないというのに。
大体、我と付き合って長曾我部は楽しいのだろうか。
帰り道、ずっと機嫌良くはしていたが。
電車の窓の外、遠離っていく長曾我部の姿が焼き付いている。
そういえば、いつも笑っている印象がある。
いつも、周りに友人が多く居るからだろう。
…やはり、判らぬ。
その友人達と居れば良い筈だ。
何故、わざわざ我の傍に来るのだろうか。
単なる好奇心か。
興味本位か。
他人の本心など知る必要も無いが、興味が失せたら離れていくかもしれぬ。
我に面白味など無いのだ。
それが判れば、長曾我部も自然と寄って来なくなるだろう。
それで良い。
目を閉じ、我は長曾我部の付き合うの意味を結論付けた。
気が楽になったのと同時に、少しだけ感じた胸の痛みは気にするのを止めた。
余計な事まで考えてしまいそうな己を切った。
さて、腹が空いたな。
帰宅途中で買い求めた夕食用の弁当を食べる事にしよう。
それから、風呂と今読んでいる本の続きを読み、眠るだけだ。
これで一日が終わる。
今日は疲れたので、直ぐに眠れそうだ。
椅子から立ち上がり、部屋を出る。
携帯に着信があったのに、気付かぬ儘に。
2011.01.15 back
元親×元就、学園パロ、青い春な話
元就視点、イマイチ付き合うの意味が理解不明