orange 〔4〕


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隣を歩く
左にいるのを確かめて
本当にいるのが嬉しくて

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思った以上のトントン拍子で、俺は完全に舞い上がっていた。
付き合うのにOK貰って、直に初下校も出来たろ。
ぎこちなくだけど、話も出来たしさ。
…今まで付き合ってたコ達と反応がイマイチ違う気もすっけど。
それはそれで、ご愛敬ってモンだし。
もしかして、今まで誰とも付き合ったコトがナイって証拠じゃねえか。
それはそれで、ヨシ!

一気に縮まった距離に、浮かれて当然だ。
やっぱ、思い切って良かったよなあ。

隣から見た毛利は、思ってた以上に綺麗な顔立ちをしてた。
歩く度にサラサラ揺れて、耳を隠す髪。
触ってみたくて仕方なかった。
睫毛が長くって、鼻筋が通ってて、目がガラス玉みてえで。
どれもこれも、俺が見惚れるのに充分だった。

この至近距離で拝めるが、俺だけなんだなあ、と思うと。
優越感が満たされる。
もお、俺以上に誰も毛利には近付けさせねえぞ。
そんな使命感も湧いた。

ただ、緊張してるよなあ、この俺が。
何を話しゃいいのか、何も浮かばねえ。
普段の俺からじゃ有り得ねえ。
大体、一々考えてなんてしねえもんな。
それで出てきた台詞がアレってのもな。
好きなモン、何って…小学生か俺は。

あ、そうだ。
初めて聞けたな、毛利の声。
これはまで話した事ナシ、見てるだけだったんだから、当たり前。
それが、聞けた。想像してた硬質のガラスみたいのじゃなかった。
通りの良い、落ち着いた声だ。
イイ声だ。もっと聞きたい。

「長曾我部」
「あ、何だ?」
「先程の話だが」
「好きなモンの事か?」
「そうだ。我は甘味が好きなのを思い出した」
「へえ、そうなんだ。じゃあ、今度さ、美味い店見つけとくから一緒に行こうぜ」
「構わぬ」
「よし、約束な」

そう言って、毛利の顔を見ると。
ゆっくりと、頷いてくれた。
少しだけど、笑ってくれたのを俺は確かに見た。


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うおーっ、とベッドの上に倒れ込んだ。
あー、何かまだ興奮が続いてる。
枕に顔を埋め、何とか気を静めようとしたが無駄だった。
今日の帰りの事を思い出すと、顔がニヤけた。
ニヤけるに決まってんだろ。

細い指先だったなあ。
体温は低い。冷たかった。
アレ、俺がもっと温めてやりてえな。

俺がデカいのもあるけど、毛利は細くてちっさい。
隣歩いてると、旋毛が見えた。
触ってみたかったなあ。
流石にそれは拙かろうと、我慢したけどさ。
頭撫でたら、どんな顔すっかな。
それも見てみてえなあ。

はあ…。

始まったばっかだってのに、あれこれしたくて仕方ねえ。
やっと、漕ぎ着けたんだからよ。
落ち着け、自重しろ、焦んなってのは判ってんだよ。
けどよー、毛利がOKくれたんだぜ。
大声上げて喜んでもいいよなあ。

俯せから仰向けに体勢を変える。
天井に向けて、腕を思いっ切り上げる。
んー、と全身に力を込めて、一気に力を抜いた。
ついでに目を閉じて、毛利の顔を思い浮かべる。

表情があんま動かないから、逆に感情が出ると。
マジ、見惚れる。目が釘付けられる。
マジ、ヤバいって。
溜息がいくつも出てくる。

そういや、電車が逆方向ってのは、考えてなかったなあ。
あ〜、残念だあ。少しでも長くいたいってのによ。
反対側の電車に乗って帰ってく毛利。
目で追って、見送ってたんだけど、気付いてくんなかったなあ。
手も振ったんだけどよ。
もっと積極的に、俺が動かなきゃダメだな。
よし、明日からはそれでいこう。


「兄貴、夕飯だってさ」
「おう、今行く」

ベッドから勢い良く起き上がり、ドアに向かい掛けたトコで。
ポンと思い付いた事を実行するべく、携帯を手に取った。

『明日の朝も一緒に学校行こうぜ。駅で待ってる』

簡潔だけど用件をはっきりと打って、俺は毛利にメールを送った。
返事待ちになっけど、これはこれで胸ん中が擽られて楽しい。
毛利が返事をくれるのを楽しみに、俺は夕飯を食いに部屋を出た。





2011.01.17
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元親×元就、学園パロ、青い春な話
元親視点、OK貰えて舞い上がり中、幸せ浸り中