orange 〔6〕


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ひとつクリアすると
次への願望が湧き出す
キリがないと思っていても
止めるなんて絶対不可能

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少しずつ、毛利の事を知っていく。
聞くと、毛利はちゃんと答えてくれる。
家族は年の離れた兄さんが一人だけ。
しかも、忙しいらしいから、殆ど一人ぼっち。
家事は長年通ってくれてる家政婦さんがいるから、不自由はナシ。
今日誘ったランチ一緒の時も、手作り弁当を持ってた。

趣味は、読書。実用書と推理小説を読んでて。
テレビは、ニュースぐらいしか見ねえ。
聴く音楽は、別にナシ、興味ナシ。
ゲームはやらない、その分、勉強をしてる方がイイって…。

こうしてみっと、なかなか個性的だなあ、毛利は。
まあ、それはそれで、可愛いっちゃ可愛いなあ、と。

『お前、もう終わってんな』

政宗のバカが、何か言ってたが気になんねえ。
どうせ、やっかみだろうし。
慶次や真田は、手放しで応援してくれてっし。
佐助は、それなりに的確な助言してくれる。

『兎に角さあ、マメに声掛けてあげた方がいいと思うよ』

それは、確かに。
大人しいってワケじゃねえんだろうが…。
なんつーか、積極的に自分から動くってコトしねえみたいだ。
毛利は。

まあ、一寸取っ付きにくいカンジはあるよな。
俺も声掛けるまで、時間掛かったもんなあ。
どうやって話し掛けたらいいか、俺らしくもなく悩んだもんな。
なんで、成功した時の喜びったらなかったさ。
これからのコトも、絶対に上手くヤッてみせるぜ。

何で、早速ヤルのは今度の日曜のデートだ。デート。
ドコ行こうか。何しようか。あ〜、悩む。
毛利の喜ぶコトって、どんなコトなんだろうなあ。
折角だ。楽しませてやりてえんだ。
俺と毛利、付き合ってんだからさ。


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「おーい、毛利ー、ココ、ココ」

遠目でも判る毛利の姿。
背筋を伸ばして歩いてくる。目を惹かれる。
周りと空気が違うのが、一目瞭然。
大声で呼ぶと、気付いて上げた顔がナンか可愛かった。

「…遅くなった」
「あ、違う違う。俺が早く来ただけで、毛利は遅刻なんかしてねえって」

そっか。だから、俺を見た途端、毛利は小走りして来たんだな。
自分が遅刻したのかと思ったんだ。律儀なんだなあ。
そんなトコも、好ましいつーか。
毛利の一面が知れて、嬉しいつーか。
ついつい、顔がニヤけちまった。

「どうかしたか?」
「な、何でもナイナイ。それよりさ、今日どっか行きたいとかリクエストあるか」
「いや、無いが」
「じゃあさ、ガラスの工芸展ってのがあんだけど、それってどうだ?」
「それで構わない」
「よし、行こうぜ」

差し出した手に、毛利が自然と手を返してくれたのに。
俺はさっきより盛大に、顔がニヤけたのが判っちまった。
あー、ホント毛利とデートなんだなあ、って実感で舞い上がった。


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佐助や慶次の助言。
映画ってのはデートの定番だが、趣味が合わないとアウト。
何回かデートを重ねてから、同意したモンを観る方がイイ、と言われた。
それには、納得したな。うん。

コンサートは止めといた方がイイ、と最初っから釘刺し状態。
俺の趣味に合わせると毛利が無理だろうし。
逆だと、俺が会場で爆睡だ…って、ナンだよ、それはっ。

初回からアウトドア過ぎると、毛利が疲れちゃうだろうから。
美術館が無難じゃないか、って結論に達した。
で、平面より立体を眺めてる方が俺も退屈しないだろうから、って。
この場所、ガラス工芸展となったワケだ。

館内は、歩く靴音が響くくれえで。
すっげ、静かな空間がだった。
そんな中で、隣を歩く毛利をチラチラ見ながら、一緒に居るを満喫してた。

作品のひとつひとつを丁寧に見て、説明文を読んでる毛利の横顔は。
どのガラス工芸よりも、キレイでさ。
ナンかすっげ誇らしい気分になっちまった。

俺の視線に気付いて、毛利が俺へと視線を向けてきた。
こんな顔、こんな目もするんだ。
デートに誘って良かったなあ。きちんと、記憶しとかないとな。

「何だ?」

周囲が静かだから、毛利は小声で聞いてきた。
その囁くような声に、俺は毛利の耳に顔を寄せて。
俺も小声で、囁き返した。

「ココ出たらさ、一休みしようぜ。約束した美味い甘味の店、見つけたんだ」

甘味に反応して、毛利の表情が変化した。
それが又可愛くて、俺はもう何度目になるか判らないニヤけた顔になっちまった。





2011.02.19
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