Melody Fair【center】


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約束は義務ではなく
ひたすら想う気持ちの結晶で
何よりも愛おしく温かい

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記憶にある幼い頃の元親は、我よりも身体が小さく。
大人しく、直ぐに泣いてしまう子だったが。
とても優しい子だったのを覚えている。

一つ年上の我は、隣に住んでいた事もあり、元親の面倒をよくみていた。
我があまり外で遊ぶのを好まないのと。
元親が外へ出たがらない内向的だったのが、一致した為に。
二人で一緒にいるのが、多かった。

よく本を読んでやっていた。
元親が読んで読んでとよくねだってきていたのが、微笑ましく。
請われる儘に、お気に入りの本を何度も読んで聞かせてやっていた。
瞳が元から大きいのを更に大きくさせて、何度もせがんできていた。

子供心にも、元親を可愛いらしいと思っていた。
我より小さく、ふわふわとした髪で、大きな瞳を持つ元親。
大泣きをするが、我の言葉で泣き止み、一生懸命に笑った顔を向けてくる。
それが、とても好ましかった。

『ぼく、ナリ、だいすきだよ』

そう言って、よくしがみついてきていた。
離すと泣くので、手をいつも繋いでいた。
何処にでもついてきていた。機嫌良く。

『おっきくなったら、ぼくをナリのおむこさんにしてくれる?』
『チカが本当に我よりも大きくなったら、考えよう』
『ほんと?』
『ああ、約束しよう』
『わかった。ぼく、ぜったいナリよりおっきくなるよ』

そんな子供の約束を今でも覚えている。
それだけ印象的で、我も元親だったら良いと考える程には好きだったのだろう。
子供だった分、純粋だったのだろう。

父の仕事の都合で海外赴任となり、家族全員で渡英した。
あの時の元親の癇癪が、一番凄かったと思う。
誰も手を付けられなかった。我以外には。
だから余計に存在を忘れられなかったのだろう。
帰国した時に、元の家へと戻り、隣へと挨拶をしに行った時。
実は、元親の成長が密かな楽しみだったのだ。

しかし…。

何もここまで徹底的にならなくとも、と。
我より、頭二つは高くなった長身を見上げた時は。
驚きと共に、呆れ返ってもいたのだ。
元親には、言っておらぬが。


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時間が一気に動き出していく。
止めていた子供の時が。

結婚の話がどんどんと進んでいく。
何の問題が無い事もだが、元親自身が拍車をかけている。
兄上と一度大きな衝突をしてから、特に。

兄上は、ただ妹の我を心配してくれているだけで。
別に嫁ぐ事を反対している訳では無い。
それを過剰反応する元親も元親だ。
子供の時の癖が抜けないようだ。

昔も、兄上にだけは食って掛かっていたからな。
大泣きしながらだったが。


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「ナリ?」
「どうした?」
「いや、それ俺のセリフだって。疲れたか?」
「大丈夫だ」
「ん〜、ならイイたんだけどさ、疲れたらホントに言えよ?」
「それはチカも同じだ」
「あー、俺も大丈夫だって。疲れてなんかいらんないしよ。
 何しろ、ナリを嫁に貰うんだからな、頑張らねえと」

二人で決めなければならない、式の詳細の打ち合わせで。
元親は始終、機嫌が良い。
気付くと、我を見ている。我から目を離さない。
とても嬉しそうな顔で。
その顔を見ると、我も嬉しくなる。
これが幸せというものなのだろう。
元親が傍にいると、強くそれを感じる。

「では、我も頑張らねばな」
「ん、でも無理は禁物だぞ」
「それ程、ひ弱では無い」
「心配なんだって」
「過保護」
「仕方ねえじゃん。ナリ、細いしさー、ぶっ倒れられたら…困る」
「何故だ」
「結婚式伸ばしたくねえモン。これ以上、我慢出来ねえってのに」

本気で、その言葉を言ってくる元親の目は真剣で。
我は、そっと苦笑するしかなかった。

「何だよ、呆れたのかよ」

大きな身体全体で拗ねだした元親の頭へと手を伸ばし。
子供の時と同じ感触の柔らかい髪を撫でてやる。
目を丸くして、我の行動に驚いている元親に。
今の心境を伝えてやった。

―――我も同じだ、と。





2011.02.24
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元親×♀元就、現パロ、弐萬打キリリク話
元就視点、幼馴染設定の結婚行進曲、その2