Melody Fair【left】
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どうしたら伝えられる?
全部
ひとつ残らず
好きだって気持ちごと抱き締めたい
そんな心の中を伝えたい
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夜。
目が覚めた。
うっすらと瞼を開くと、部屋の中は暗かった。
ヘンな時間に目が覚めちまったんだな、と。
枕元に置いてある時計を取ろうとして、俺は気が付いた。
腕の中の、元就に。
スヤスヤと、小さな寝息と一緒に眠っていた。
少し暗さに慣れてきた目を凝らすと、寝顔も見えた。
目を閉じてる元就は、起きている時とは又印象が違う。
ちっこい頃、一緒に昼寝してた時に見てた寝顔とも又違う。
初めて見る、俺だけの元就の寝顔。
こうして身体を寄せ合って、安心し切って、委ねてくれてる姿。
思わず腕に力が入りそうなのを留める。
折角、よく寝てんだから起こしちまったら可哀相だ。
元就、疲れてるもんな。
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朝から忙しい一日だった。
当然っちゃ、当然。俺と元就の結婚式当日だったもんな。
丸一日、大騒ぎで神聖な一日だった…なあ。
元就は綺麗で綺麗で、何度あの場からかっ攫っちまおうか、と思った事か。
そのたんびに、心読まれて睨み付けられたんで、留まったけどな。
流石に、花嫁花婿が式場脱走したら、笑い話になっちまう。
…それに、後が怖え。
元就ってば、怒る時は本気で怒るからなあ。
ま、それは置いといて。
隣に立つ花嫁衣装を着た元就は、綺麗だった。
和装も色直しの洋装も、どっちも似合ってた。
そりゃあ、俺が選びに選んだモノだもんな。
列席者からの感嘆の嵐だったぞ。
それくらい元就の花嫁姿は綺麗だった。
永遠を誓う言葉。
指に嵌めた結婚指輪。
夢みてえに浮かれて、鮮やかに記憶に残った。
地に足が付いてる暇がねえくらいに。
俺は元就ばっか見てた。
大事にする。幸せにする。
そんな陳腐なセリフばっかしか言えねえけど。
それを言えば、元就は笑ってくれる。
『我もチカを幸せにしてやる』つー、人が総崩れしそうな事を生真面目に言い放って。
何回、俺に惚れ直させる気なんだ、元就は。
結婚式に披露宴に、その後の二次会、三次会、四次会までは付き合った。
結婚した高揚の勢いで。
けど、流石に俺じゃなく元就の体力が保たないんで、お開きにした。
祝福のやっかみの嵐を最後に。
新婚旅行は明日の夜、出発予定にしてあるから。
一休みも兼ねて取ってあったホテルに、泊まった。
興奮の余韻は抜けてなかったが、もう焦る事はねえ。
元就は俺の奥さんになったんだもんな、と。
疲労困憊の元就を休ませる為に、一緒にベッドに入った。
が、寝る迄の一連の出来事だった。
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出来るだけ、そーっと。
動かないように、元就を起こさないように。
細心の注意を払って、俺は元就の顔がもっと見えるように動いた。
元就は綺麗なまんまで、綺麗に育ったんだなあ。
子供の時の面影はあるけど、離れていた間の分も綺麗になってる。
…なってた。
胸ん中がどんどん熱くなってくる。
抑えてた分も、愛しいって想う分も。
色んな感情が、湧き上がってきちまった。
…やべえ。
「…チカ?」
「あ、ゴメン。起こしちまった」
「…眠れないのか?」
「ナンかさ、目が覚めちまって起きてた」
「…そうか」
「ホント、ゴメンな」
「…いい」
ぼんやりとして、口調も回ってなくて。
半分、寝惚けてる元就。
「寝ていいぞ。眠いだろ」
「…うむ」
髪を撫でてやろうとしたら、元就はごそごそと動き出し。
俺の左胸にぴったりと、顔を寄せてきた。
「ナ、ナリっ?」
「…チカの心臓の音がする…気持ち、良い」
元就の言葉に反応して、どくんと鳴った心臓の音は、元就に聞かれちまった。
一体、どこまで俺を惚れさせる気なんだ、元就は。
「…今宵は相手、できなくて済まない、明日の夜は必ず…チカ、の…」
「は? ナリ、ちょい待てっ、寝るなっ」
内心の動揺を鎮めてる隙に、爆弾発言をした元就は。
睡魔に負けて、又、健やかな寝息を立て始めた。
…おーい。
自分の発言に責任持ってくれよー。
明日の夜、取らせるからな。絶対。
これぐらいはイイよな、と。
俺は元就のデコに恭しくキスをして、俺も目を閉じた。
眠れるかどうか判んないけどな。
―――元就、愛してる。
2011.02.25 back
元親×♀元就、現パロ、弐萬打キリリク話
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