Melody Fair【home+in】


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緩やかに満ちてゆく
身体の中に愛おしいと想う気持ちが

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「あっ………ん、ぅ…ん」

声が上がってしまう。止められない。
指を絡めて握られていた手に、縋ると。
力強く握り返された。

「大丈夫か、ナリ」
「…へ、いき…だ、あっ」

下肢が己のものでは無いような感覚がする。
熱さと痛みが綯い交ぜになり、意識が混乱しかけるのを。
我は必死に、耐えていた。

覚悟はしていたが、これ程とは思ってもみなかった。
元親のものを押し込まれた瞬間の痛みは、壮絶だった。
歯を食い縛れば、余計に痛みが増したが。
力など、どう抜いていいのか…判らず、ただ身を強張らせるだけの我を。
元親は根気良く宥めてくれていた。

「ほら、ナリ、息吐けって、力が抜けっから」
「……む、り」
「大丈夫、出来るって、ほら」

顔中にキスをされる。額に、鼻先に、頬に。
肌は密着しているが、重さは感じられない。
元親が腕で自重を支えて、我を包み込むようにしているからだ。

「…チカ」

きつく閉じていた瞼を開くと、元親が微笑んでいた。
幸せだと伝えてくる笑みで。
そこで、漸く我は深く息を吐く事が出来た。
肩に入っていた力が抜ける。我も元親へと笑い返した。

「ゴメンな、ナリ。辛いよな」
「平気、だと…なんど、…言わせる」
「ナリがさ、そう言ってくれんの判ってんだけどさ、
 身体に無理させてんのは一目瞭然だろ。
 痛いの我慢してんの見え見えだしさ」
「ばか…もの」
「ん、俺、バカだって。そんでもナリが欲しくてさ、
 こうしてナリが大変でも俺を受け入れてくれんのが、
 嬉しくてしょうがねえ、バカ」

鼻先を触れ合わせてくる。視線を合わせてくる。
元親の眸の色に、我が映っていた。
それを見ていると、痛みが薄れていく気がした。

「では…」
「ん?」
「我も…ばか、なの…だ、な」

元親の瞠った目に喜色が浮かぶ。口元が笑む。
我は震える腕に力を入れて、持ち上げた。
その両手を元親の首へと回して、ぎゅっと抱き着いた。


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新婚旅行は、元親の希望で海外で。
我は何処でも構わなかったので、元親に全て任せていたら。
着いた先は、タヒチだった。
水上に建てられているコテージで、物珍しがっていたら。
ほぼ、閉じ込められた。観光など一つもせぬうちに。

「ナリを独り占めしてえんだ」

日本から離れた場所。
家族からも、知り合いも誰も居ない場所で。
元親と二人きりの空間と時間を過ごしている。

「ココだったら誰も何も邪魔出来ねえだろ」

腕を取られ、引き寄せられた。
抱き締められ、口吻けられた。
元親の感情の全てが流れてくるのを。
我は歓喜と共に、受け入れた。


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目が覚めた時は、朝で、陽が昇り始めた頃合いだった。
横を見ると、元親が眠っていた。
子供の時と変わらない寝顔でもあるが。
やはり、大人の男へと変貌もしている。
それが、不思議な気がした。
離れていた距離と時間を軽々と縮めて。
元親は我を娶った。我も望んで、だ。

同じベッドで、素肌の儘、寄り添っている体勢に。
改めて、気恥ずかしくなる。

我と作りの違う元親の身体…腕や、肩。
胸にそっと指先で触れてみる。…固い。
やはり、我とは違うのだな。
クスッ、と笑いが零れた。

まだ、起こさなくても良いだろう。
もう少し、この儘で…いたい。

怠く、痛みの残る身体を慎重に起こし。
眠る元親へと、我から口吻ける。
これは、内緒にしておこう。

出来たばかりの秘密を一つ抱えて。
再び、目を閉じる。
名実と共に夫となった元親に寄り添って。


―――結婚したのだなと、じわりと実感が湧く幸福感の中で。
   我は眠りに就いた。





2011.02.26
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元親×♀元就、現パロ、弐萬打キリリク話
元就視点、幼馴染設定の結婚行進曲、オマケの初夜編