曼珠沙華【3】




by 遙か



兎に角、起き上がろうと。
気を取り直して、動こうとした八戒は。
初めて、自分の身体が動かない事に気が付いた。
そして、動けないのは縛られているからという事実に目を瞠った。

「悟浄っ!」
「どーかした?」

上に掲げられている腕。動けない身体。
大きく広げられている足。何も身に付けていない自分。

理解と同時に広がった羞恥に、八戒はパニックを起こした。

「こ、これは一体どういう事なんです。」
「見ての通り、だけど?」
「…見ての、通りって…。」
「監禁。」

八戒の言葉を遮った悟浄の一言に、会話が止まる。
何処か、抜け出させないかと八戒が手と足を必死に動かすが。
逆に食い込んでくるようで、痛みを覚えた。

「無駄無駄、しーっかり縛ってあるモン。」
「どうして、こんな事を…。」
「八戒が逃げらんねぇよーに、って決まってんじゃん。」
「…逃げる、って。」
「俺さ、もうヤメたんだ〜。」
「止め、た?」
「そv 親友のフリ。イー奴のフリ。
 八戒が信じてる『沙悟浄』って、俺のフリ。」
「悟浄…。」

今、目の前にいるのは、確かに八戒の知っている悟浄の姿をしているが。
口調、目つき、笑い方は冷ややかで。
八戒の見知ったものでは、なかった。

『悟浄、じゃないって…どういう事…。』

八戒は何かを否定しようと、無意識に左右に首を振った。
それを。

「これも、俺なんだよ。」

顎先を指で強く掴まれ、振っていた顔を八戒は、悟浄に固定されて。
ギリッと音がしそうな強さで、痛みが生じる。
悟浄の顔が、八戒へと近付く。
紅い眸が、射抜くように見据えてくる。
その切迫さに、八戒はぎゅっと眸を閉じた。

「見ろよ、ちゃんと。」

俯く事も許さないとばかりに、悟浄の指に力が入る。

「見ろって、八戒。俺を。」

苛立ちを含んだ声に、八戒は瞼を益々固く瞑った。
それが、耳を塞ぐ事も、悟浄を押し退ける事も出来ない八戒の。
唯一の手段だったのだが、却って。
悟浄の苛立ちを、大きくさせた。

「俺が見ろって言ったら、目開けて見るんだよっ。」

八戒の股間に手を伸ばし、遠慮にく八戒のものを悟浄は握り込んだ。

「痛っ!」

加減の無い痛みに、悲鳴を上げ。
思わず開けた目の中に、飛び込んできたのは。
依然、八戒を見続ける悟浄の眸だった。

逸らされない視線。
居たたまれない程の、熱の籠もった。

「悟浄、止め…。」
「ヤメない。」

悟浄の掌に力が更に、入る。
自分のものを握られている事に、八戒は恐怖を知る。
逆らうという事に、一本の罅が入った事を。否応無しに。

「判らせてやるよ、八戒。」
「悟浄…。」

そう言って、さっきまで八戒のものを握っていた手で。
悟浄は、今度は優しく。
八戒の頬を撫でた。



【続】



モドル