お天気予報
by 遙か
『ゴメン』は、謝罪の時に使う言葉だけれども
『アリガトウ』と、同じ位の意味を持っている
その相手が、大切な大切な人ならば 尚更に
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ケンカって訳じゃねえ。
言い争いも、してねーもん。
ただ、黙って家を出てきただけ。
『何度、言ったら判るんです。
空き缶を灰皿にしないで下さいって。
その耳は飾りものなんですか、悟浄。』
八戒のワンパターンの小言に、返事をしねーで出てきた。
虫の居所が悪かったと言えば、それまでで。
タイミングが悪かった。
いつもなら聞き流せるコトに、カチンときた。…どうしてか。
アテがないから、足は自然と街へと向かう。
時間ツブし、暇ツブし。
気が紛らせれば、何も考えられなければ…。
そんな投げ遣りな気分で。
足元の石をコン、と蹴ってから俺は街へと向かった。
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街に着いてからの俺は、ツイていた。
何もかも、タイミングがイイ。
一番初めに会ったダチが、仲のイーヤツで。
ソイツが又気の合うヤツを2人呼び出して。
面子が揃ったってコトで、雀荘に遊びに出掛けた。
勝負じゃなくて、純粋な遊び。
勝ったり負けたりに、単純にはしゃいだ。
そのまんま、腹が減ったから夕飯を食いに行って
そのまんま、気分がイーから呑みに行って。
―――――俺は、ずっと笑っていた。
心ん中に、デン、と座っているチクチクしたモンを。
懸命に無視しながら。
そっちを見たら、俺は絶対に自分から掴まりにいっちまう。
けど、今はゴメンだ。
俺の意地っ張りのプライドが、拒否してる。
バカらしいとも、判ってんだが。
今の俺には、必要で…。
けど、今頃、どーしてんだろ…アイツは。
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いつもの事。いつもの事。
と、僕は呪文を繰り返す様に、頭の中をそれで一杯にする様に、
考え続けていました。
何でもない―――いつもの事。
だから、心配のいらない―――いつもの事。
僕は、必死に自分に言い聞かせていました。
「ピ〜ッ?」
鳴き声で、ハッとするとジープの僕を心配そうに見ている目とぶつかりました。
どうやら、僕はずっとテーブルを拭き続けていたようです。
食事の後片付けをした後の。
空き缶が一つだけ残っているテーブルを、せっせと。
「僕は大丈夫ですよ、ジープ。」
「ピィ?」
――本当に? と言う様に、ジープは羽をバタバタとさせて。
僕を更に、見つめてきます。
「本当に大丈夫ですから。
ほら、遊んできていいですよ。」
誤魔化したい気分と一人きりになりたい気持ちで。
僕は部屋の窓を開け、ジープへと笑いかけました。
「……ピィ〜。」
察しの良いジープは、僕の気持ちを汲み取って。
パサリと羽音をたてて、窓から天気の良い外へと遊びに行きました。
ああ、洗濯しなくちゃ…と、思いつつ。
何もやる気が出なくて、困っちゃいましたね。
こんなに一つの事に、囚われてしまうなんて。
囚われている自覚を持っていても、信じられません。
―――悟浄
僕は、調子に乗りすぎましたか?
一緒に暮らし始めて、一年半。
お互い、遠慮から相手を考え過ぎたぎこちない会話から。
毎日の積み重ねで、ゆっくりとだけと打ち解けてきた、僕達。
言い合いの大喧嘩は、何度かした事がありますが。
こんな風に、悟浄が何も言わずに…って事は今まで無かったので。
内心、ショックを受けてしまっているんです。
…ふぅ。
帰って…来て、くれるでしょうか。…悟浄は。
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結局。
賭け事も、何かもツイてたってのに。
俺は家に帰って来た。八戒んトコに。
振り払えるコトの出来ないコトに、俺は降参してコソコソと帰って来た。
後、10分もしたら日付が変わる時刻。
そおーっ、と家ん中に入って。そおーっ、と今を覗くと。
八戒がソファに座って、本を読んでいた。
いつもと、同じ光景がそこにあった。
「あ………お帰りなさい、悟浄。」
「お、おぅ…ただいま。」
「…コーヒーでも、飲みますか。」
「あ、う、うん。頼むワ。」
「はい。待ってて下さいね。」
立ち上がり、キッチンへと立つ八戒を目で追っていたら。
目の端に、テーブルに置かれたままの空き缶を見た。
空き缶のせいじゃなく、俺のせい。
俺のせいで、八戒のせいじゃない。
立ったままだった俺は、八戒を追いかけて。
後ろから、後ろ姿の八戒を抱き締めた。
「ご、悟浄?」
「………。」
「…どうしたんですか、悟浄。」
「………。」
八戒の肩に、バツが悪い表情を埋めて。
俺は呟いた『ゴメン』って。
俺の謝罪を聞いて、抱き締めている八戒の身体がピクンと動いて。
それから…肩に乗っかっている俺の髪を。
頭をフワリと、撫で始めた。
『僕も…ごめんなさい』と、小さく小さく。
俺だけに聞こえるよーに呟いて。
――俺は嬉しくて嬉しくて
ただ、嬉しくて
ギューーーッと、八戒をもっと抱き締めた……
2004.11.21 UP
☆ コメント ★
文羽さまに捧げますv
相互リンクのお礼で御座いますvv
リクエストを頂いて、書き上げました(笑)
『悟浄が八戒にゴメン』っていうお話
可愛らしいリクに、喜び勇んで
どんなにのしようかな〜と考えて
こうなりました(苦笑)
本当にたった一言ですよね
仲直りの言葉って(笑)
ではでは、慎んで贈らせて頂きます♪
モドル