Wish Wing



by 遙か



出逢う為に 出逢った
惹かれる為に 惹かれ合った

過去は知らない 未来は判らない
今を 手に取る為に――――――2人は

††††† †††††


地界・天界・人間界と言っても、細部の違い位で。
構成には、大きな差異はありません。
どこの世界も、先の尖った三角形で構築されております。
なので、一番の違いはそれぞれの世界の住人の意識レベルという事になります。

善の天使と悪の魔物。
そして、その中間からどちらにも転べる人間達。
白と黒と、曖昧なグレーですね。


さて、この物語の発端は。
黒の世界の住人が、白の世界の住人を見初めた事から始まりました。
しかも、それがTopの方の位置のおふたりでしたから。
即、悲劇物となりそうなのですが。
所が、2人共あまりにもマイペースな為、周りの方が慌てふためいてしまいました。
何しろ、誰も気付かないうちに手に手を取って。
中間地点の人間界に、駆け落ちしてしまっていたのですから。


――それでは、そんな2人の時間を巻き戻して見てみましょうか…。


††††† †††††


何の不満もありませんでした。
義務も責務も、重荷ではありませんでしたし。
穏やかな時間の流れに、身を置いて満足でいましたから。

時々、ふわっと湧き上がるものに心が。
水面に落ちる雫の様に、反響してゆくけれど。
ゆっくりと、凪いでいって何事もなかった様に。
又、元に戻ってゆくんです。

原因が判りませんでした。ずっと。
何で、そうなるのか。そうなってしまうのか。
僕の意思から離れた、意志の力。
僕は、何かを探しているのでしょうか。
漠然とした、形も無い、曖昧な何かを。

それは、いつか見つかるのでしょうか。
僕の前に、現れてくれるのでしょうか。
くすっ――他力本願ですね、これって。

そんな考えが、天使長のお役目を果たしながら。
浮いたり、沈んだりと、していました。

忘れそうで、忘れられない日々を過ごしていた、或る日。
力強い羽音と共に、降りて来た魔界の方と出逢いました。
ご丁寧に『捲簾』と、名乗ってくれました。
お名前から、直ぐに肩書きも判って。
僕はポンと、手を叩いていました。

不思議そうな、綺麗な黒い瞳の人の前で。


††††† †††††


………ボケボケ、だ。
天然にしても、これは凄い。

ニコニコと。
魔族の俺が怖いって事が、無いんだろうか。この天使は。
普通に、初対面の挨拶をされちまった。
この俺に。

名前を言っただけで、俺が誰だか判った様だが。
その後、脅える訳でもなくニコニコしている。
肝が据わっているって、いうのか?
とにかく、不思議な存在だった。

偶然、空から見掛けて降りてきた俺自身も不思議だが。
どうしてだと、考える前に動いていたんだよな。

目を合わせると、ニコリと微笑んだ。
その翡翠の色をした瞳に、俺を映して。
答えを知っているのだろうか、この瞳は。
俺にも判らない、俺の事を。
だからだろうか…。

『失礼しますね』と、飛び去ろうとした時の手首を掴んで。
【次】の約束を取り付けたのは。

今まで、何でも目の前に揃っていた。
欲しいというものがなかった
いや、何かを欲しいという気持ちがある事を知らなかった。

その答えをこの天使が知っているんだったら。
―――俺は、知りたい。


††††† †††††


「どうしたんです? 思い出し笑いして。」
「ん、してたか?」
「ええ、とても嬉しそうに。」

―――あれから、天使と魔族は人間界へと降りてきておりました。

今までの柵とか、追っ手が来るかもとか。
考えたらキリがありません。
2人で居る事を望んで、2人で居る事を2人で選んだのです。

「お前と初めて会った時の事を思い出していたんだ。」
「そうなんですか。
 随分と懐かしい頃の事を思い出していたんですね。」
「名前も聞かなかったのにな。」
「聞いてくれませんでしたから。」

花の顔で、ふわりと花の様に微笑む、元天使長の八戒は。
抱き締められている魔王の継承権を放り投げてきた捲簾の胸へと。
そっと、寄り添いました。
きっと、誰も見た事のない甘える仕草で。

「今は知っているから、いいだろ? 八戒。」
「ええ、捲簾。」

独占欲丸出しに、捲簾は八戒を抱き締めて口吻けました。
永遠を共にする、パートナーへと……………。



2004.12.5  UP



☆ コメント ★


のぞみさまに捧げますv

えーと、この話は『CLAMP』の『Wish』がベースになってます
原作を読んで頂けると、私が…のぞみさんが捲八で萌える理由が
判って頂けると思います(笑)
のぞみさーん、今度、羽根語りをしよーねぇ〜♪

ではでは、慎んで贈らせて頂きます♪




モドル