戯
by 遙か
「だから、何でもかんでも口にするのは止めろって言ってあっただろっ!!」
ビリビリとした空気の振動。
怒りをMAXにした声に、部屋の外の人達はビクンと跳ね上がって。
キョロキョロと辺りを見回して、怒鳴られたのが自分じゃないと確認して。
安堵してから、一体又何があったのだろうと。
ある部屋のドアを見つめてしまいました。
ドロドロとした網目模様の重苦しい雰囲気が。
部屋の中から流れ出してきている感じのドアを―――――
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「そんなに怒鳴らないで下さいよ。」
「怒鳴りたくもなるだろうが。
大体、原因はお前だろっ。」
「おや、人聞きの悪い。」
「悪くて、お前が反省するならいくらでも言ってやる。」
「反省? 何をです?」
「その複雑な割には、見境のない脳みそをだよ。」
「酷い言い様ですねぇ。
今、むっとしましたよ。流石に温好な僕も。」
「俺の方がムカついてるわっ!」
絶対、この2人の間には死んでも入りたくない。
仲裁なんで無理です、のビリビリした空気の部屋の中で。
捲簾と天蓬は、睨み合っていました。
西方軍御大将・捲簾の一睨みは腹の据わっていない輩には。
ビビリもの。脅威以外の何物でもありません。
黒耀の瞳が放つ眼光の鋭さは、一刀両断の切れ味です。
そして、それに双璧するのが。
副官・天蓬元帥の睨み……ではなく、微笑です。
確かに、声も表情も穏やかなのに。
にっこりとされるだけで。自然と背中には冷や汗が垂れてゆき。
引き攣った笑いしか返させなくなります。
そんな2人の容赦の無い睨み合い。
…原因は一体、何なのでしょうね???
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「…お前、一体どうする気なんだ?」
「どうするも何も、今の所どうしようも出来ないのが現状です。
原因究明していませんから。」
暫し続いた睨み合いの末。
いつもの如く、捲簾が折れて大きな溜息を付きました。
天蓬の方は、捲簾の自分に対する甘さににっこりと微笑みましたが。
「しかしなあ……。」
「なってしまったものは仕方ありません。
前向きに善処しましょv」
何で、自分の方が頭を抱えなきゃならないんだと、思いつつ。
捲簾は天蓬の上から下、全身に目を向けました。
大きさ的には、リカちゃん人形サイズ。
きちんと、汚れた白衣を着て、足には便所下駄を履いて。
黒の猫型耳と細く長い尻尾の、オプション付き。
元帥フェチの方々には、生唾モノのレアモン姿に。
「いいのか。お前はそれで。」
「いいも何も、なっちゃったものはなっちゃっているんですから。」
「不都合とか考えないのか、お前は。」
「あっ、だって、それは貴方が僕の代わりに考えてくれますから。」
「………。」
確かにそうなので、返す言葉が捲簾には無くなりました。
「取り敢えず、ご飯はそんなに量は食べませんから、流石にこのサイズじゃ。
…お風呂は溺れると危ないですから、入らなくてもいいし。」
「…風呂は、俺が毎日入れてやる。
メシもちゃんと食わすからな。」
「えーーーっ。」
「えーっ、じゃない。」
「じゃあ、ぶ〜〜〜っ。」
「…ぶ〜っ、でもない。」
「貴方は僕のお母さんですか、口の煩い。」
「…誰が、そうさせているんだ。」
「え〜っと、僕みたいですねえ。」
「判ってんなら、イイコにしてろ。」
「はい、いい子にしますから、お願い2つ聞いて下さい、捲簾v」
急に両手を胸の前で組んで、目をキラキラと輝かせてのおねだりポーズ。
背中を伝う冷や汗も打ち止めらしく。
捲簾は、毒を喰らわば皿までの心境で、先を促しました。
「言ってみろ。」
「はいv 先ずは僕が本を読む時は頁を捲って欲しいんです。
今の僕では、大変ですから。」
だったら、読まなければいいじゃないかと内心、即座に思いましたが。
捲簾は思い留めました。
「…了解。で、もう一つは?」
「貴方がお出掛けの時は僕を連れて行って下さい。
絶対に、置いて出掛けないで下さい。」
思いもかけない甘いおねだりに、破顔一笑した後。
捲簾は、掌をそっと天蓬へと差し伸べました。
「それも了解。
取り敢えず、ポケットの中にお前を大事にしまっておくよ。」
「しまったまま、忘れないで下さいね。」
捲簾が差し出した指に、天蓬がチュッとキスをしました。
端から見たら、悲壮感溢れる状況の筈ですが。
この2人には、どうやら通用しない様です。
―――これからも、どんな展開が待っていようとも。
2005.1.8 UP
☆ コメント ★
紫暮さまに捧げますv
キワモノの捲天とのリクエストを頂きまして
こんな話を考えついた私の脳内は………(笑)
相互リンクのお礼として相応しいかどうかは
目を瞑って下さいませv
ではでは、慎んで贈らせて頂きます♪
モドル