立 葵
by 遙か
昼の喧噪を忘れたの様に
夜の闇は静かに息づいている
秘密を甘く取り込んで
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やっぱり、順番じゃないと言っても。
早いモン勝ちって、あるだろう?
トンビに油揚げ、なんてマヌケだけはゴメンだからな。
好きな相手は欲しくなる。他の奴には渡さない。
俺の独占欲は、人一倍だからな。
ただ、軽さが信条。重い付き合いは、苦手だ。
その場限りで、楽しめる方がいい。
ホレたハレたと、息苦しくするのはご遠慮させて貰っていた。
―――ずっと、な。
それを覆したというか…そんなのを吹き飛ばした相手を。
俺は見つけた。見つけてしまった。
見掛けで判断すると、手酷いしっぺ返しを喰らうを。
実体験出来る相手――俺の副官を務めてくれていて。
全てを取っ払った素のまんまを欲しいと、思った相手――八戒。
物腰は柔らかで、物言いは丁寧だが。
不用意に近付くと、ビリッと電流を流される。
油断してると、口の中にワサビを放り込まれる。
そんな風に侮れない。
それが面白くて、ちょっかいを出し続けていたら。
俺は八戒に嵌った。気が付いたら、ストンと。
余りにも、あっさりだったんで『好きだ』を自覚するのは簡単だったな。
しかし。
さあ、手を出すぞの段階になって…俺は手を止めた。
本気の相手だから、確実に手に入れたい。
八戒にも、その気になってもらってな。
どうせなら、両想いの方がいいだろ。
その方が、気持ち良い。
なので、鋭そうだが鈍い八戒に。
八戒自身の意志で、俺を好きになって貰う事に。
俺の手練手管の全力を傾ける事にした。
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気になる人がいます。
気にしたくないのに、どうしても気になってしまう人が。
こんなの、初めてです。
自分で、自分をコントロールしきれないなんて。
本当にこんなのは初めてで、僕は戸惑っていました。
……表面には、出しませんでしたけど。
特にあの人…捲簾の前では、出すものかと思っていました。
だって。
原因は、捲簾だと判っていますから。
絶対に、それを悟られるのは嫌なんです。
なんか…弱味を見せる様で。
だから。
出来るだけ、仕事以外で近付きたくないのに。
捲簾はそんなのを気にも止めずに、僕へと話し掛けて。
笑い掛けて、飄々としています。
それを…カンに触る僕と心地良く思う僕が居て…困惑しています。
僕は一体、どうしたいのか。
自分でも判らなくなってきています。
捲簾の。
僕の名前を呼ぶ声を聞いていると。
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それぞれの答を持っているのは、俺と八戒。
後は難しく考えないで、晒け出してしまえばいいんじゃないのか?
なあ、八戒。
俺達は上手くいく。
絶対に上手くいくから、握った手を握り返せ。
お前の意志でさ。
俺はお前に決めてあるから、安心しろ。
そんな困った顔をするな。
呆れたって、顔もな。
腰を抱いて、引き寄せて。
身体を密着させてから、俺は半分固まっている八戒の耳へと囁いた。
『好きだ』と。
それと『欲しい』と。
八戒が欲しいと、告げた。
怖ず怖ずと、俺の背中に回った八戒の指が。
ギュッと、軍服の布地を握ったのを返事と受け取って。
俺は八戒の身体を押し倒していった。
思ったより、すんなりと押し倒されてくれた八戒の身体を。
執務机の上に横たえる。
きっちりと、留められている軍服のカフスを外すのは。
本人以外では、俺が初めてだろう。
夜の闇と月の明かりのコントラスト。
白い軍服の前を開くと、細く華奢な首筋から続く形良い鎖骨が現れる。
重さを軽く掛けて伸しかかり、薄い皮と肉を吸い上げて。
俺の印を付ける。
始まりの合図。お互いを手に入れる契約。
貪欲に身体を―――余すことなく、心を。
「…八戒。」
二の腕を。薄い胸を愛撫しながら、呼ぶと。
うっすらと、八戒の目が開いた。
不安を湛えている…初めて見る頼りない、瞳。
「…捲簾。」
小さく呟いて、両腕を上げ。
八戒は、自分の目を覆い隠した。
その仕草に、俺は煽られた。
「嫌か?」
「…嫌、じゃありません。」
「だったら、怖いか?」
「…少し…少し、だけです…けど。」
戦慄きながら答える唇に、深いキスを落とした。
何度も『好きだ』を繰り返し、告げながら。
俺は、八戒の身の奥へと身体を沈めていった。
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目が覚めると、朝が明けるところでした。
空気が眠りから覚める一瞬前の、時刻。
僕の身体は、捲簾の黒の軍服に包まれていて。
更にその上を捲簾の逞しい剥き出しの腕に、抱かれていました。
昨日の事は夢じゃない…夢じゃなくて、良かったです。
僕は軋む自分の身体に、眉を顰めながら。
もう一度、目を閉じました。
身の奥に刻んだ夢を受け止めながら…。
『僕は貴方が好きです…捲簾』
2005.9.9 UP
☆ コメント ★
のぞみさまに捧げますv
のぞみさんのサイトが3周年を迎えたという事で
お祝いに、僭越にも贈らせて頂きました(笑)
『白軍服の副官八戒さん』シリーズと、勝手に命名して
のぞみさんが気に入ってくれた事をいいことに
贈り続けているシリーズ物で御座いますv
あ、単独で読めますから、その辺はご心配なく
今回は『お初』の話
カップリングは、捲八ですからね〜(笑)
ではでは、慎んで贈らせて頂きます♪
モドル