『空』
by 遙か
いつから でしょう
あなたと 生きてみたい と
自然と 思えるように なったのは
††††† †††††
ふと。手を止めて。
僕は顔を上げました。
誰かに呼ばれた様な気がして。
…けれど、そんな事はなくて。
部屋の中には、僕が出す音以外。
何もありませんでした。
僕が居候させて貰っている、悟浄の家の。
僕に与えられた、僕の部屋。
空いているんだから使え、と。
屈託無く言われて、その言葉につい甘えてしまいました。
ちゃんと、出ていくつもりでいたんですよ?
これ以上、迷惑掛けられませんから、と。
ちゃんと、思っていたんです…よ。
けど、全ての事に一件落着がついた時に、あやふやの儘。
悟浄の家に一旦戻ったら、怪我人認定されて。
ベッドに押し込まれて、絶対安静を言い渡されて。
その儘、住み着いてしまいました。
心の中に、拘っている事はあります。
僕は罪人ですから。
この儘、ここに居てはいけない、と。
ここは、借宿と言い聞かせていたんです。
なのに、誰かと暮らす――一人じゃないという、安堵感。
一人で生きてはいけるけど。
一人でいられると思い込んで、知ってしまった虚無の大きさ。
――悟浄という存在が、僕に教えてくれました。
幸せになるつもりは、ありません。
大体、そういった感情は欠落していますから。
花喃の死と共に。
けれど…。
どうして『けれど』と、思ってしまうのでしょうか。
悟浄が居てくれるだけで。
優しい気持ち。温かい気持ち。
ふわっ、として、丸くなっていく心に気付いてしまう気持ち。
僕はここに居て良いのでしょうか。
何度も繰り返して湧き上がる戸惑いを。
躊躇わず、その度に打ち消してくれる、悟浄。
僕は、貴方を………。
††††† †††††
『愛なんてわかんねぇ。』
呪文のよーに、俺の中で蓄積され続けてきた言葉。
硬い殻を作るよーにして、デッカイ境界線を引いて。
愛想良く。
誰にも踏み込ませないよーにしてた、俺。
それが、コロンとひっくり返った。
アイツ――八戒に、会ったから。
余計なお世話をせっせとして。
八戒のコトをハラハラドキドキと、ずっと見続けてた。
ヨチヨチ歩きの赤ん坊を心配する、親バカのよーに。
フラフラしてんだけど、元はしっかりしてっから。
大丈夫かと思うと、危なっかしーんで。
目も手も離せなかった。
俺が誰かを気にして、かまうなんてさ。
俺が一番、ビックリしたさ…。
話を聞いたり、聞かせたり。
よく俺が、こんなマメなコトやってるよな〜ってコトを。
せっせとしてた…。
今思うとさ、何とか繋ぎ止めたくて必死だったんだ。
八戒のコトを俺が、さ。
八戒の悟能の時の事件は、一応の決着をみて。
今は俺んトコにいる。
腹の傷だって、完治してネーのに。
あんなキレイな目まで抉っちゃってさ…。
マジ、無茶ばっかしてよ…。
やっぱ、目離せネーじゃん。
心配で、一人になんて出来ネーじゃん。
なぁ、そーだろ、八戒。
お前は俺のトコにいればイーんだよ。
あんま余計なコトばっか、考えんじゃネーの。
俺さ。お前の笑った顔が見ていてんだ…八戒。
以前は適当な時間に、適当に帰ってた道。
今は家に帰ると、八戒が待ってると思うだけで。
ウキウキしてる俺がいる。
昔からのダチや、酒場の顔見知り連中の冷やかしにはケリを入れて。
八戒が一人で寂しがらないよーにと、俺はさっさと帰る。
俺の中の寂しさを埋める為にも―――
「たっだいまっ! 八戒〜v」
「おかえりなさい、悟浄。」
君を呼ぶ声。
僕を呼ぶ声。
一人じゃないと力強く呼ぶ声が。
いつでも互いに聞こえる様に…。
2005.11.22 UP
☆ コメント ★
山崎あゆみさまに捧げますv
あゆみさんのサイトとの相互リンクのお礼のお話ですv
これまた、大遅刻なのに…ドキドキ(汗)
喜んで頂き、サイトアップの運びとなりましたvv
リクエストは『黒くない八戒で、悟浄との幸せなお話』でしたv
白八戒さんになっているかな…は、甚だ疑問形ですが(苦笑)
お互いを呼ぶ声に、幸せを感じる事が出来るのっていいな、と。
ではでは、慎んで贈らせて頂きます♪
モドル