月の雫
by 遙か
人間でも、妖怪でも。
その人なりの、譲れないものが多々ありますが。
今回は、恋人関係にある2人のお互いの味覚の好みについての拘りを。
論じてみましょうか。
これが、なかなか興味深いというか何というか………。
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僕自身は、食事というものにあまり執着はありませんでした。
最低限の栄養補給が出来れば、それで良いものでしたし。
それが、その見方が変わったのは。
悟浄と暮らし始めてからです。
美味しそうに食べてくれるんです、悟浄は。
量は悟空には敵いませんが、本当に美味しそうに。
表情で、言葉で。
僕が作ったものを喜んで、食べてくれるんです。
誰かの為に。
喜んでくれる事に何かをする――僕がするなんて、不思議な感じでした。
昨日出来なかった事。
しようと思わなかった事が、今日は出来てしまう。
しようと、動いているんです。
生きていれば、何かが確実に変わる。
ええ。
確かに、そう…でした。
僕は悟浄を好きになりましたから。
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―――――ん〜、まぶし。
…八戒のヤツ、またカーテン全開してったな。
明るくしとけば、俺が起きてくっだろーと。
天気のイー日は、必ずカーテンを開けてくんだよなあ。
……う〜ん……ハイハイ、起きてやりますよ。
起きりゃイーんでしょーが。
俺はベッドから抜け出して、シャツを引っ掛け。
朝の一服を吸い始めてたら。
匂ってきたのはコーヒーの香りだった。
八戒が淹れているコーヒーの香りが。
――ん、イー匂いv
俺と八戒の好みにバッチリね、って。
でも、このコーヒーで、大ゲンカしたんだよなあ、俺達。
アイツの作るメシってのは、ホント美味くてさ。
文句の付けよー全くネーの。マジ美味。
お世辞の余地ナシよ?
けど…コーヒーだけがなあ。
口に合わないってワケじゃなかったんだけど〜。
お互いの好みっての?
それが一致しなくてさ〜。別にナニをそこまで、ナンだけどさ〜。
ヘンに拘っちゃって、大ゲンカ。
………一週間、口きかなかったんだよなあ。あん時。
バカみてぇに、2人して意地張ってさ。
今だから、笑えんだけどね。
…すっげ、険悪状態。あはは…。
こぇーよ。よく、やったよな、俺も。
けど、その甲斐あって、今は毎日俺と八戒の双方の好みのコーヒーが。
毎日、飲めてんだから終わり良ければ全てヨシ、ってな。
砂糖もミルクも、なあんも入れネーけど。
ナンとなく甘く感じるのは、八戒が俺の為に。
淹れてくれっから…だよなあ。
―――と、俺らしくねぇ甘ったれたコトを考え始めてる俺は。
八戒にすっかりとやられてんだなあ、全面的に。
惚れた方の負け。
妥協じゃない、人をうけ入れるってゆーのを。
俺に教えたのは、八戒だ。
八戒が俺に、目を向けてくれたからだ。
もういねぇ、姉ちゃんじゃなく、今傍にいる俺をさ。
思いっ切り、タバコを吸って天井へ向けて煙を吐き出す。
まだ、半分残っているのを灰皿へと押し潰してから。
八戒のいるキッチンに行く為に、俺は部屋のドアを開けた。
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「おはよv」
「おはようございます。
丁度、珈琲が入ったところですよ。」
「ちょーだいvちょーだいvv」
「はいはい、一寸待ってて下さいね。」
八戒の白い手が、ゆったりした動作で。
悟浄の為の、珈琲を用意していきます。
特定の誰かの為に、何かをする事。
学ぶというより、心から開かれていく事――心を開くという事。
些細な事でも、2人でなら。
幸せという形に出来る想いを。
今日も、春の日差しの中。
2杯の珈琲の中に。
甘く、溶かし込んで―――――
2005.12.06 UP
☆ コメント ★
綾子さまに捧げますv
相互リンクのお礼で、リクエストを頂いていたお話です(汗)
綾子ちゃん〜今頃で、ごめんね★
『58で珈琲』というネタでという事で
誰でも初めっから好み通りの味は出ない
相手を理解しようと、寄り添っていくを
テーマにしてみましたvv
ではでは、慎んで贈らせて頂きます♪
モドル